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ラッシュ/プライドと友情のOASISのレビュー・感想・評価

ラッシュ/プライドと友情(2013年製作の映画)
4.5
1976年のF1世界選手権でのジェームス・ハントとニキ・ラウダのライバル関係を題材とした伝記映画。
クリス・ヘムズワース、ダニエル・ブリュール共演、ロン・ハワード監督。

好きな俳優二人が出ているだけで既に評価高し。
肝心なニキのクラッシュ&炎上シーンまでのストロークが随分長いが、その後の展開は涙無しには観られないくらいに心打たれたので十分挽回できていた。
ただ、副題にもなっている「友情」という面は薄く、むしろ「嫉妬」や「羨望」の感情が前面に出ている。
一番近いのは「尊敬」かな、と思いました。

豪放磊落なジェームスとは正反対な、精密機械の様に堅実なニキ。
両者が勝利に向かってせめぎ合う姿を手に汗握るレースシーンと共に描いているわけですが、エンジン音やブレーキ、歓声で沸き立つ会場などの迫力は是非劇場で味わうべきだと思います。
3Dでも無いのにまるで飛び出してくるかのような臨場感に、ここぞとばかりにハンス・ジマーの音楽が重なって終盤はアドレナリンがエライ事になってました。前半では丁寧に描かれる二人の性格と随所に挟まれるギャグ、後半では美しいカメラワークとダイナミックなレースシーン。ロン・ハワードの演出が冴え渡ってました。


そして、400度の炎に包まれ肺にまで吸い込んでしまったそのクラッシュ事故、処置の壮絶さたるや、観ているだけで激痛が込み上げて来るような凄惨さで、ダニエル・ブリュール渾身の見せ場。丹念に積み重ねた人物描写を爆発させ、怒涛のように一気に感情が押し寄せて涙を誘うこの映画屈指の名場面でした。

そんな事故から僅か42日で生還できたのも、病院のベッドからTVの中に常に見えたライバルの存在があったから。
お互いを高め合うにはどちらかが常に先を行っている必要があるし、それは友情という優しくなぁなぁな関係では無くて「お前という存在がいたから強くなれた」というリスペクトに他ならない。
ニキの最後の決断は少し予想外でしたが、死地に身を置きながら守るべきものは守り夢には貪欲な彼の姿は、色男であるジェームスよりも何倍も格好良く見えて痺れました。
間違いなく主役はニキです。

F1に全く詳しく無いですが、二人の男の人生ドラマとしては多いに楽しめたし、号泣必至の傑作でした。

「友情」はやっぱり違うかなぁ。
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