ライアン・ゴズリング×ニコラス・W・レフン監督のタッグ最新作。
タイでボクシングジムを経営する兄弟の兄ビリーが殺され、その復讐をしようとする弟ジュリアンと母が、現場に居た唯一の目撃者、チャン刑事と対決する事になるという話。
話自体はとってもシンプル。
しかし説明台詞を極限まで削ぎ落としてあり「ドライヴ」というより「ヴァルハラ・ライジング」寄り。
ライアン・ゴズリングが主役だと思いきやチャン刑事が主人公だったとは驚いた。
「神と対峙する男」の話だから刑事の存在が神であるのは明白。
それにしてもなんて小柄で醜い神だ。
ちょっとキツいバイオレンスの後には必ずチャン刑事のカラオケが入ったりしてなんだかシュールな映像も。
他にも何を言わんとしているのかがわかりにくくなる事しばしば。
クリスティン・スコット・トーマス演じる兄弟の母親は、自分の考えでガチガチにジュリアンを縛ろうとするけども、それに対して彼は何も歯向かおうとはせず、娼婦とプレイする時でも自分を縛らせて嬢のオナニーを観ているだけ。
雁字搦めに縛られて、まるで去勢されているかのように性の匂いを発さない。
そんな彼の握る拳を性器に見立てて母親の子宮に回帰させる事で呪縛から解き放たれ「神に赦された」っていう事なんだろうか。
チャン刑事は自分からは人を殺めようとはしないから悪役ではないけども、自分流のルールでやるなら誰でも神になれるわけで。
おっさんのカラオケも含めてやっぱり意味が良くわからん。
映像の端々に漂う「シャイニング」っぽさが気持ち悪さを感じさせるし、タイの街のネオンが良い具合に雰囲気を作ってたりしますが、意味ありげで本当は何も無いような映像が多くそこまで熱狂は出来ませんでした。
「アレハンドロ・ホドロフスキーに捧ぐ」という言葉があるように、考えるだけ無駄な気もしてきた。
嫌いでは無いが、好きじゃない部分が多くてイマイチ。
賛否両論なのは、独りよがりな映像がただ垂れ流されるという所にあるんだろう。
このままPTAみたいに哲学的な作風になりそうで怖い。
その前にもう一回「ドライヴ」みたいなアクションものを作ってほしい。
@梅田ブルク7
