ニューヨーク・タイムズ紙で人気ファッションコラムと社交コラムを担当する名物フォトグラファー、ビル・カニンガムを追ったドキュメンタリー。
50年以上に渡ってストリートスナップを撮り続けるビルの姿を通して、一つの事を継続する厳しさを教えてくれる作品だった。
「お金に縛られていると自由が無くなるから嫌なんだ」と彼は言う。
契約金の小切手すら受け取らない彼は、周りから「どうかしてる」と思われたとしても気にせず街行く人達のファッションに目を輝かせる。
そんな彼の笑顔を見ている内に、誰も否定する気にはならなくなってしまう。
時代と共にファッションや街並みは変わっても、人は変わらない。
服という「鎧」は変化しても着ている中の人間は変わらずあり続ける。
時代の波の中にあっても、服に覆われた人間の本質を見抜く存在であるビル本人こそ、「変わらない」事を伝え続ける街の監視者なのかもしれない。
本人はそれに気づかないとしても、彼に写真を撮られた人達は確かにビルを通して街に認められたと感じているはず。
ドキュメンタリーとしては特に目新しいモノは無いが、ビルのあの人柄、あの笑顔は守り続けたいと思った。