KnightsofOdessa

ガーデンのKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ガーデン(1995年製作の映画)
4.5
[『鏡』のラストにほぼ持っていかれる] 90点

奇跡の処女が空を飛ぶ。『鏡』と同じシーンをラストに持ってきて親子の和解を世界の神秘にまで昇華したという摩訶不思議なシーケンスである。りんごの木が生えた"神の庭"に名も知れない羊飼いがやって来て男を諭し、ルソーやウィトゲンシュタインがなんの脈絡もなく登場し、奇跡の処女がいとも容易く男を癒す。と言いながらも男は懐疑主義者であり、必要以上な宗教性は感じない。俺は俺が信じたいものを信じるし、他人もそうだから自分が信じるものを押し付けることはしない。欧州の人間にこういう感じの人がいるのは嬉しいね。

一応の主軸は親子の和解にあって、その間を破壊するのが中年の人妻で、修復するのが奇跡の処女であるのにはなんとも言い難い感情を覚える。しかし、中心とは言ったものの実際に見えてくるのは冒頭とラストくらいで、後は私好みの迷宮といった感触。

『鏡』のあのシーンをパクった映画を他に知らないが、アレンジの仕方としては完璧に近い。正しく天才的な一本締め。
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