マヒロ

ウォーム・ボディーズのマヒロのレビュー・感想・評価

ウォーム・ボディーズ(2013年製作の映画)
1.0
ゾンビ青年“R”が、ひょんなことから出会った人間の女性ジュリーに恋をしてしまう、という話。

ゾンビ×恋愛という新しい切り口の映画なので、だいぶ期待して観たんだけど、これはダメだったなぁ。

こういう映画の前提として“ジャンルのお約束を守りながら破壊する”というのがあると思う。例えば『ショーン・オブ・ザ・デッド』では「襲われた人々がショッピングモールに立てこもる」というお約束を守りながらの「イギリス人だから立てこもるのはパブ」という破壊が面白かった。

ただ、この映画はその前提からして崩れてしまっている。
まず、ゾンビの設定。よみがえった死者で人の肉を喰らうという設定はいつも通りなんだけど、自分で思考し、感情を持ち、言葉をしゃべるという特徴がある。このゾンビたち、最初の方ではしっかり人を襲うしぼそぼそと単語を発する程度なものの、後半になるにつれてたどたどしさはあるもののべらべらしゃべるし、人食い描写なんて一切なくなってしまう。そのせいで後半はゾンビというか著しく体調の悪いコミュ障にしか見えなくなってくる。
さらなる問題は人類、ゾンビに次ぐもう一つの種族・ガイコツ。ゾンビの腐食が更に進んだ姿で(ゲーム版『バイオハザード』のクリムゾンヘッドみたいな)、感情を持たずに肉を喰らうことのみを目的としているやつらで、要するに普段のゾンビ像に近いのはこちらの方。こいつらがRとジュリーの仲を邪魔する“悪”の存在になる。

…つまり、この映画をはたから見ると“人間の女の子に恋したコミュ障がゾンビに邪魔されながら頑張る”という構造にしか見えない。ゾンビの恋物語を描きたいなら、ハナからガイコツなんて登場させずにゾンビ側をもっとゾンビらしくして、意思疎通ができないもどかしさとか食欲に抗おうとするさまを描写したほうが面白かったはず。どうも、ゾンビ×恋愛という設定に胡坐をかいて、きちんと物語を練ろうとしていないように見える。この監督にはズバリ“ゾンビ愛”が足りない!屁理屈ばっか並べたが、僕が言いたいのはそういうことです。

(2015.51)
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