マヒロ

ファンタジア2000のマヒロのレビュー・感想・評価

ファンタジア2000(1999年製作の映画)
3.0
1940年版『ファンタジア』の現代版として、当時台頭しつつあったCGをふんだんに取り入れて作られた作品で、オーケストラによる幕間を挟みつつオムニバスで短編アニメを見せていくという構図はオリジナルと全く同じ。オリジナル版最大の欠点は、幕間の時間がダラダラ長い上にこの後のアニメーションで起きることを何故か丁寧に解説するので聞いた話をまた見せられるという謎構成にあったんだけど、今作ではちょっとしたユーモアを交えつつササっとアニメパートに入ってくれるので見やすいのが良かった。
しかし、アニメーション技術が極まりきっていたオリジナル版と比べてしまうと、発展途上なCGがかなり醜くノイズになるところも多く、ちょっと時代が早かったかなという気はした。

・『交響曲第5番』
三角形で構成されたシンプルな蝶達が、善と悪に分かれて戦いを繰り広げる。CGと手書きアニメを融合させた今作を象徴するような作品だが、抽象的過ぎて特に言うことはない。

・『交響詩「ローマの松」』
タイトルを完全に無視して、曲のイメージから連想された空飛ぶ鯨の群れを描いた作品。恐らく唯一のフルCG映像だが、未発達なCGで描かれたカチカチな鯨達の無機質さ、水飛沫のぎこちない動きなど、お世辞にも良い出来とは言えないクオリティー。

・『ラプソディ・イン・ブルー』
大都会NYで暮らす人々の大変さとささやかな幸せを、シンプルな線のキャラデザインで描いたおしゃれな作品。『紙ひこうき』みたいな近年のディズニー短編アニメにも近い雰囲気があり、これは結構良かった。

・『ピアノ協奏曲第2番~アレグロ』
アンデルセン童話『すずの兵隊』をモチーフにした作品で、バレエ人形にちょっかいをかける悪いビックリ箱と、彼女を守ろうとする片足の兵隊人形の戦いを描いたいかにも童話っぽいお話。それなりの面白さ。

・『動物の謝肉祭より「終曲」』
フラミンゴの群れの中で、一羽だけヨーヨーを手に入れた個体が大暴れする……というお話。2分程度の超短編だが、カラフルな映像とリズミカルなキャラクターの動きが楽しい良作。何となく『リズム天国』思い出した。

・『魔法使いの弟子』
『ファンタジア』と言えばこの話という感じだが、続編とかリメイクなのかと思ったら完全にオリジナルと同じものを流すだけという謎仕様。劇場でもう一度観ることが出来るというサービスなのか、尺が足りなかったのか……。

・『威風堂々第4番・第2番・第3番・第1番』
ノアの方舟をモチーフに、ドナルドダックがつがいのデイジーが船に乗っていないと思い込み慌てるというお話。いつものディズニーアニメに声がついてないだけ、という感じ。

・『火の鳥』
恐ろしい火の鳥によって滅ぼされる自然と、その復活を荘厳に描いた作品で、トリに相応しい圧倒的なクオリティ。火の鳥って聖なる存在というイメージが強いが今作ではかなり禍々しい存在として描かれていて、森の精霊?を襲い地表をまる焦げにする場面の迫力は凄まじい。後の『モアナ』っぽさもあるかも。普通にこのクオリティで長編観たいと思えるくらい良かった。


(2023.113)
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