ハター

スノーピアサーのハターのレビュー・感想・評価

スノーピアサー(2013年製作の映画)
3.4
昨年のいつしか予告を見て興味をそそられた本作は、格差社会における人間同士の対立に重きを置いたSF映画という稀有な作品であり、ある視点でおもしろさを感じる結果となりました。
冒頭で見る貧困層に対する処遇の画は、まるで戦時の迫害を想起させられ、否応無しに目が食い入ります。陰鬱な空気感を醸す中、物語は足早に展開していきクーデターを起こすシーン。これが至極痛快。このシチュエーションだからこその道具と行動、ハチャメチャな画が目に楽しい。視聴者として非常に感情昂ぶる場面です。
次第に個々の性格や関係性などが明るみになり始め、様々な辛みや悲痛な思いを持った人間像を表情や台詞で表現している点が巧く鬼気迫るものを感じました。前方車両を目指し進む過程では、矢継ぎ早にバイオレンスな様が描かれていきますが、そういった描写に関しては程度が守られています。主題やストーリー進行を踏まえた上でも残酷描写の必要性は薄いと思うので、これに関しては納得です。
特権階級の車両を通過するシーンでは原色をふんだんに使い、列車内でも世界が滅ぶ前のありふれた生活が存在している事を伝えてきます。遊び心が散りばめられたこのシーンでは、序盤からの張詰めた展開で蓄積された見えないストレスを一旦リセットでき、エンターテイメントを味わう時間でした。
冒頭の早い段階からテンションは右肩上がり、そして一気に駆け抜けていった感覚ですが、決して棒読み単調ではなく、一つ一つ内容のある作品に仕上がっていました。
キャストも役柄にマッチしており、『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』での美しく艶かしい吸血鬼役が記憶に新しいティルダ・スウィントンの陰険で醜い老女の様は印象度抜群!また、ソン・ガンホの表情としゃがれた低域の声も記憶に色濃く残ります。
本作のテーマでもある革命・反乱という部分は原作に無い点だそうですが、そここそポン・ジュノが本作に関するインタビューでも語る"メッセージ"が込められた部分であるのかもしれない、と観賞から一夜明けた今、考えています。
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