emily

わたしはロランスのemilyのレビュー・感想・評価

わたしはロランス(2012年製作の映画)
4.9
教師のかたわら小説をかくロランス。30歳の誕生日を迎え、ずっと抱えてきた思いを恋人のフレッドに告白する。それは女になりたい、男として生まれてきたのが間違ってるということ。それでもなお愛し続け応援するフレッドだったが、厳しい現実を前に二人の10年を綴るラブストーリー。

心情を表す描写が非常に芸術的でロマンティックである。音楽と自然、多用するスローモーション。映像から伝わる訴えかける流れる映像はまるで詩を読んでるように言葉になって伝わってくる。またスタンダードサイズ画面もその先に何があるのかを想像させる。

涙を表す水の滝。手紙の見せ方。まさに映像で感情の渦で異次元の空間に誘う。

人物の配置も色使いも小物ひとつひとつが指先まで感情が伝わってくる感じ。幸せの絶頂にカラフルな服が降ってくる演出。パワフルな音楽。表情を隠してそれを映像でみせてくれる。

音楽のバリエーションや画面の大きさ、とにかく、見せ方に監督の冒険心を感じられる。作品の魔法、映像の魔力を感じられる、異次元の世界をみせてくれた。

ストーリーはいたってシンプルで、テーマとなるのは自分の真実の姿、自分の存在、普通の境界線。

ロランスにとって女として生きることは普通のことであり、それが自分自身なのだ。フレッドとの間には愛があれど超えられない性別の壁がある。でも愛する気持ちは同じなのだ。何度もぶつかりあい、二人の間での普通をみつけようとする。しかしであったときから間違っていた。
フレッドは男のローランスを求め、ローランスのらしさはそれではない。
自分らしく生きること、たとえいばらの道であっても後悔はないだろう。
10年かけてやって気づいたあまりにも悲しすぎる愛の物語。
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