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火垂るの墓のぴろのレビュー・感想・評価

火垂るの墓(2008年製作の映画)
2.0
【生々しさ 感情表現 アニメ版に劣る 実写の強み活かせず】

戦後の混乱期を懸命に生きた、ある戦争孤児の兄妹の物語。

言わずと知れた高畑勲監督のアニメ映画の実写版。しかし、実写であるにも関わらず、戦争の悲惨さを視聴者に強く訴えかけるという点において、アニメ版に劣っていると感じざるを得なかった。焼け野原となった街や数々の死体、戦時中の市井の人々の様子に生々しさが欠けていたことに加え、物語の展開や役者の演技が常にどこか淡々としていた。
特に、清太の感情表現が物足りなかった。清太は14歳という年齢にして、両親と家を失った悲しみや不安、そして妹を守るという責任を一身に背負う。アニメ版ではその苦しみがよく表現されていて、節子のある台詞で清太の感情が溢れ出し、涙を流す場面はこちらの胸に迫ってくるものがあった。あの場面によって、天涯孤独の兄妹はその絆をさらに強くしたのだ(依存しあった、と言った方が正確なのかもしれない)。しかし今作の清太は何故か感情の起伏が少なく、クールである。これでは視聴者が感情移入しづらいだろう。

蛍の場面など幻想的な雰囲気が強調されていた点や、父との思い出のエピソードが追加されていた点は自分としては良かった。もっと全体のまとまりを良くし、実写の強みであるリアルさ、生々しさを追求すれば、より良い作品になるのではないか。


【メモ】
○母親役は松田聖子。残念ながら物語の中でも何か浮いて見えた。
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