emily

バービーのemilyのレビュー・感想・評価

バービー(2011年製作の映画)
3.7
ソーセージ大好きな知的障害の父と暮らす体の弱い妹スンジャと、小学生の長女スニョン。民宿を営み、昼間はスニョンが雑貨を売ったりして、同居の叔父にこき使われている日々。あるときアメリカ人の親子がやってくる。スニョンを養子に迎えたいというのだ。叔父はお金のために彼女の養子縁組にいそいそと動いている。アメリカ人の娘バービーはスニョンと仲良くなるが、スニョンはアメリカには行きたくない。家族の元にいたいという。妹スンジャはどうしてもアメリカに行きたいと言い、あらゆる手段でアメリカ行きの切符を手に入れようとするが・・

主役の長女を演じるのはキムセロン。そうしてその妹役の少女も実際にキムセロンの妹なんだそう。養子に出すというだけで、叔父さんひどいと思うのだが、貧困な生活、母親のいない生活、知的障害の父と病気の妹・・それも彼女の未来のためには致し方ないのか?と入りは軽い感情移入から、そこの秘められた事実が、観客に明かされてからは、望めば望むほど、
頑張れば頑張るほど皮肉にも不幸の道へ向かっているのがいたたまれない。

なんとか現状を打破したいと思う妹の、小さいながら自分の病気と闘い、どこか人生を見据えていて、自分の未来のため長いものにまかれていくずるがしこさがある。その目の奥は決して笑ってない、バービー人形みたいに冷めた表情が印象的。それに対する姉は家族がいればよい。現状に満足しており、そこから出ていきたいとは全く思っていない。

妹が笑えば笑うほど観客は胸が苦しくなり、大人は見て見ぬふり、バービーも事実を知った後も何も行動に出ない。いや何もできないのだ。ただただ妹が見せた本当にうれしそうな笑顔。アメリカに行けることを本当に喜んでるその笑顔がいつまでも脳裏に残る。ほんの一瞬初めて勝ち取った幸せ。その笑顔があまりにも残酷で涙さえ流す余裕がなかった。
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