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ながらえばのumihayatoのレビュー・感想・評価

ながらえば(1982年製作の映画)
5.0
82年当時の日本が見れる
冒頭駅のシーンは電車オタクも嬉しいだろうと思う

感情的で衝動的になる笠智衆に涙が出るし
宇野重吉とのやりとりが泣かせる
子供夫婦に厄介になっている年老いた夫婦
終わりに近づいてきたその旅路の最後に、僕だったらどういう選択をするだろう。妻になんて言うだろう。
とても胸にくる話だった。

そして、日本の社会問題による家族・夫婦、世代間のズレの問題もかなりしっかり描かれている。

笠智衆が名古屋に帰る理由を
若い世代は心血を注いだ仕事の後始末だろうと考える
何故こうまで理解していないのか不思議だが、この時代から既に若い世代の効率主義・言動一致主義の感情の劣化は始まっていたという事だろうし、共同体としての全世代型家族はより形式的なものとなり、それに耐えられない生活様式(昔であれば少なからず持っていた自給自足による最低限の衣食住の消失)により、崩壊は始まっていたんだなと思う。

夫婦一つとってもそうだが一部の人間は
心の繋がりというものが信じられず
一緒にいた時間の長さや、言葉や行動(どっかで見知った愛情表現)による愛の証明にこだわり、それを絆や繋がりと勘違いする。

裏にある真意はいつだって表に出すときには偽証されてる可能性があるものなのにだ。
そして言葉や行動(社会的に広まっている愛情表現)をしない者のことを、徹底的に理解しようともしない上に、頑固者・変わり者扱いすらする。
昨今の夫婦別姓の議論にも繋がることだろうと思う。
心の繋がりを理解しない・.勘違いする。又は何か証明が無いと信じれない人間は増えてきたと思うし、そうなれば万引き家族的な共同体のあり方や支え合いの生活は、ますます受け入れられなくなっていく。
万引き家族のラストに見られたような地獄も容認されていくだろうし
笠智衆はやはり、「仕方がない」と富山に帰らなければいけなくなる。

「おまえらはいいかもしれないが、年寄りには明日もわからんのだ!」

歳とったときに夫婦で入れる終活施設が今後増えることを願う。
又はソイレントグリーンの様に手を繋いで安楽死させてくれ。
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