タキ

ゼロ・グラビティのタキのネタバレレビュー・内容・結末

ゼロ・グラビティ(2013年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

宇宙には行ったことないけれどホンモノ感と言おうか、その説得力に圧倒される。視聴にはなるべく大きなスクリーンかテレビで部屋を暗くして見るのをオススメする。没入感をあふれる撮影方法や、素晴らしい視覚効果の技術力、少ないキャストで場を持たせる俳優の力などアカデミー賞9部門の受賞に相応しい。
シンプルに言えば面白かったが、冒頭、宇宙空間にたったひとりでぐるぐる回りながら放り出されるシーンには身震いした。次々と降りかかる災難に耐えるには90分ほどの上映時間が限界かもしれない。最後までけっこう歯を食いしばって見ていた。
主人公のライアンは医療技術を宇宙で活用するミッションに初参加というだけあって何回も搭乗しているマットと比べて不慣れ感が目につきハラハラさせられる。娘を亡くした過去から立ち直れていないこともあって全体にメンタルが不安定で、死んでもいいぐらいの感じでスペースミッションに参加していそうだったし、そんな人が宇宙飛行士になっていいんだろうかと不安ばかりがふくらむ。ひとり装備もなしに宇宙空間に取り残されたライアンを助け励ますのがベテラン技術職のマット。いつも軽口ばかりたたいているが冷静な判断ができるマットのおかげでライアンは命をつないでいると言っても過言ではない。彼が自分を犠牲にしても生きろと手を離した時、これが本当の退場だとは思わなかった。フツーに考えてライアンひとりだけではヤバイ。案の定万策尽き果て、ソユーズ内の酸素濃度を下げ眠ったまま逝こうとした時に、記憶が整理されて妙案が浮かぶという現象に視聴者(とライアン)のマットへの依存心を形作ってみせるという発想は面白かった。安心感がイッキに膨らむ。そしてラスト、やっとライアンが宇宙から地球に帰還し、コンソールのハッチを開けたら水が大量になだれ込んできて文字通り冷水をぶっかけられたような衝撃を受けた。酸素をケチってなんとか生きて帰ってきたのにまさか溺死しそうになるとは。振れ幅にクラクラする。宇宙で長期間いただけでも帰還後はかなりの重量を感じるはずなのに濡れ鼠で岸に上がったときの体の重さたるや想像を絶するものがある。ふわふわと漂い、勢いがつくとコントロールも効かない宇宙空間ののち、最後に地球における重力(グラビティ)の体感を視覚的に見せた。サンドラブロックの引き締まった体躯が太陽の光の下、力強く目に焼き付く。おそらくこの重量からくる「生きる」ということの確かさが原題の意味するところなのだと思う。すごく似たタイトルなのにそのセンスの差に苦笑いした。
NHKBSプレミアムにて。
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