YasujiOshiba

グランド・イリュージョンのYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

グランド・イリュージョン(2013年製作の映画)
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今のところ「ジェシー・アイゼンバーグ出演作品にまちがいなし」の法則は破れていない。 ウディ・ハレルソンとの組み合わせもばっちり。『ゾンビランド』(2009)も楽しかったけど、こういう個性と個性のぶつかり合いもわるくない。

おおっと思ったのはインタポールの女刑事。演じるのはなんと、あの『イングロリアス・バスターズ』(2009)でユダヤの少女ショシャナをやったメラニー・ロランではありませんか。正直、ちょっとタイプなんですわ。つい見とれてしまいました、はい。

この前見た『フォーカス』がペテン師の映画だとすれば、これも似たようなところがあるね。でもこっちはマジシャンで銀行強盗。しかも日本で言うところの義賊ってやつになるんだろうか。

でも、この4人のマジシャンの銀行破りたちは、ただの義きょう心でやっているわけじゃない。ポイントはホースメンと呼ばれていること。明らかにヨハネの黙示録に登場する「4騎士(The four hosemen)」だ。

そんな4人のホースメンを束ねるのが「アイ」は、もちろん「目」のことで、フリーメーソン的でもあるけれど、むしろ神の摂理の象徴する「目」なのだろう。だから4人は、世界が終末に近づくとき、神の摂理にしたがってホースメンとして現れ、終末の世の中にはびこる巨悪を退治にやってくる。そういう悪者をやらせると、マイケル・ケインはじつに様になるよね。

ところで邦題の「グランド・イリュージョン」は、完全に配給がつくっちゃったやつだよね。原題は "Now you see me" で、手品師の決まり文句、文字通りには「ほら私はごらんの通り」、日本語だったら「タネもしかけもありません」ってやつ。でもたしかに大掛かりなマジックを「イリュージョン」と呼ぶには呼ぶわけだし、こういうカタカナタイトルのほうがお客さんは入るんだろうな。実際、おもしろかったし。

ところで「イリュージョン」というのは、もともとは「騙す」(illudere)という意味ね。語根は ludo でこれは「遊び」の意味。イタリア語では gioco だけど、こいつも語根は同じでラテン語の iucus 。こいつの意味は「儀礼における祝詞」だったはずだけど、古ウンブリア語 iuku (祈り)や
サンスクリット語の yacati (懇願する)に通じ、ウェールズ語の iaith では広く「言語」という意味になるみたい。イリュージョンってのはようするに「言葉」の力が大きいってこと。もちろん技術も大切だけど、それだけじゃダメなんだよね。
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