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降霊 KOUREIのSSDDのレビュー・感想・評価

降霊 KOUREI(1999年製作の映画)
3.9
▫️概要
仲睦まじい夫婦は慎ましく生活しているが、妻は霊が見える体質で私生活でも、恐ろしい霊を見かけてしまうこともあり専業主婦をしている。一方の夫は音響エンジニア、映像関連のSEの作製で多忙だった。
ある時起きた女児の拐かし事件が発生し、降霊による捜査協力を妻は引き受けることになる…。

▫️感想(ネタバレなし)
恒例の高齢による降霊。同音異義語が多い単語ですな。
今回は中年の夫婦による降霊でございます。

テレビスペシャル的な立ち位置の作品なのか、クオリティは映画とまでは行かないがキャストは豪華。

私の大好物の黒沢清監督と役所広司さん主演。
今回は黒沢カメラワークは真正面気味に捉えながらも、やはり独特の映像観は強い。

しれっと軽く流されるシーンでさらっと怪異に飲み込まれてる人がいたりと静かに着実に進行する脅威の繊細さを楽しめるか否かで好みは分かれそう。

どうでも良いのですが、子供が拐かされる場面が、思春期によくたむろしていた公園でかなりノスタルジーな気持ちになりました。

なかなか配信はされないと思いますのでネタバレにおおまかに流れでも書いておきます。
ほーっと思ったけど観るハードル超えられないと思いますので、気が向いたら読み流してください。








▫️感想(ネタバレあり)
・まとめ
心理学にからオカルト気味に傾倒する学生から実験の依頼を受けていた妻は、自分の才能を使って何か逸脱して成功したいと燻っていた。
夫は音響エンジニアで忙しくしているものの、妻を気遣い、家事も手伝う愛妻家だが平凡だった。

ある日テープによる音声編集中に、未亡人になった女性からの依頼で降霊術を下の階で妻が行っていた。
そのテープを職場に持っていくと同僚が"何か声が聞こえる"とテープに聞き耳を立てたが、夫は直しておきますと、気にかけなかった。

風に吹かれ木が軋む音が欲しいと要望されたため、翌日富士山の樹海に向かう夫。一方妻はファミレスにパートに出てみるが、客の1人に赤い服の女が取り憑いているのを見てしまい。パートを辞めていた。
その頃には女児の拐かしが発生し、男が乗用車で子供を連れ去った数日経っていて、樹海では女児が逃げ出していた。たまたま夫の車を見つけた女児は、音響機材の空箱に身を潜めるのだが、気づかれず閉められ車に載せられ帰る。

誘拐犯は警察に捕まりかけるが事故で意識不明になる。
翌日には妻に大学から警察の協力を依頼され女児の捜索にハンカチを渡される。職場にいた夫は昨日以降、声のするテープを聞いた同僚が音信不通となったが、多忙から気にも留めなかった。
家に持ち帰ると妻がガレージに女児がいることに霊感から気づき、夫と驚愕する2人。女児が生きているため通報を考えるが、自身たちに疑いが向くことを恐れて家で介抱する。

翌日には処遇を考えるが、妻は大成の機会と警察に自身の能力で見つけたと思わせるように仕向始めるのだが、女児は夫を見て叫んで抵抗に合いなかなかうまく行かない。

警察に大学を介して女児の靴を廃墟で発見させ能力を提示させることはできたが、女児は抵抗した際に押さえ付けたせいか死亡していた。2人は仕方なく山中に埋めにいくことにする。

翌日以降普段の生活に戻ろうとするが、家には女児の霊が取り憑くようになった。
夫にも見えるようになり、徐々に蝕まれる2人は家から離れても霊を見るようになる。

ある時夫は女児に勝手に入ってきて死んでどういうつもりか、恨むなら自分を恨めと怒鳴ると現れた霊の女児を撲殺しようとする。庭で家事をしていると自分自身が椅子に座っているのが見えた。
夫は怒り狂い、ドッペルゲンガーに対して灯油をかけ火を放つ。

この後から職場に行っても突然誰もいなくなる現象や妻が家に全然いなかったりと、現実的な時間軸の説明がつかない事象が多くなる…。

警察が女児の遺体を見つけるのだが、死亡した時間軸がどう考えても合わないため、大学を介して再度妻に降霊を依頼するのだが、遺体が発見されているのを知らない妻はボロを出し、夫はそれを見て観念し自白に近いことを口にするのだった…。

・総評
未亡人が新たなパートナーを選ぶことを躊躇い、死んだ夫を呼ぶ降霊術を実施した際に、テープに声が入ったのだが同僚は何を聞いたのか。明らかに許さないという恨みであの世に連れ去るという内容だったのだろうが、気が触れたか。声を聞いたせいで取り憑かれたかのいずれなのだろう。しれっと怪異の被害を混ぜる黒沢節がたまらない。

女児を発見、生存していたのだからさっさと通報しろなんだが、この夫婦は冴えないのと欲が出るという二点が強かったが、そもそも女児やその家族に対しての思慮が浅いという致命的な良心的概念が破綻しているのが何より怖い。

能力が低いことは問題ではなく、平凡でかつ善良さや謙虚さが欠如していることがこの夫婦の欠点。
世の中には無個性的で平凡である割に、その心のうちがあさましい人は多数いるなというのが霊より恐ろしかった。

初めに大学で学生が説くドッペルゲンガーを見る時は、その直後で死に至る前兆というのを言っていたため。おそらく焼身自殺を行なっているため、夫は既に死んでいるのだが、最後は時系列を入れ替えているのだろう。

警察に自供→焼身自殺→死後死んだと気づかずに職場や私生活を送り霊と遭遇する日々という流れになるのかもしれない。

兎角淡々と無感情に女児の安否などを気にせず、自身の企てに興じる2人が何よりも恐ろしい作品でした。
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