Ryoma

ある過去の行方のRyomaのレビュー・感想・評価

ある過去の行方(2013年製作の映画)
4.6
疑惑が疑惑を呼び、決して絶対的ではない噂や疑念が人々を弄び狂わせる。人間が人間に支配されているような感覚に陥る人間に対しての“嘲笑“という言葉が似合う圧巻な構成。人は自己防衛のためにしばしば何かを信じたかったり誰かに疑いの目を向けたりしたがる。例えそれが自分の罪を隠蔽することになったとしても。過去の失態や誤ちの積み重ねでこんなにも人は人を信じることができなくなるものなのかと身に沁みて感じた。“あなたはあの時〜“だった的な過去を蒸し返し批判する劇中の人たち、過去に囚われて全然前に進めてないんだなとつくづく思った。過去のいかなる失敗や経験を肯定するのとは対照的な、過去はいつまでも追随し背負っていかなければならないのかもというメッセージを感じた。本作の登場人物を反面教師とする多くの教訓を学んだ。久々のこてこてのサスペンス、先が読めない展開や演者の素晴らしい演技などが相まってとても面白かった。アスガーファルハディ監督はやはり人間が心の奥深くに秘めた闇や人間のずる賢さ•腹黒さを辛辣かつシニカルに描くのがホントにうまいなと改めて感じた。
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