吉田喜重監督の『エロス+虐殺』はインテリ特有の難解さが全面に出過ぎていたが、こちらは情念と情熱にあふれていた。すごい。
長回しも、展開も予断を許さない。
馬跳びのシーンはどう終わるのか、絵沢萌子の疾走シーンはどうなるのか。どれにも緊張感がある。
長髪でカーキ色の上着をはおっている主人公は「あしたのジョー」みたいで、ギターとハーモニカも持っている。
フォーク世代、全共闘世代のいでたちだ。よくは明かされないが、過去のいきさつも、内ゲバを想起させる。
それが漁師町のポルノ映画館に流れ着く。もう、設定から創作者である監督の姿を反映しているのがいい。
そして濡れ場。声からしてアダルトな絵沢萠子もみな色っぽい。
即物的なAVよりもよほどなものだ。
特定の間隔に濡れ場を入れるというロマンポルノの制約の中で、若い感性が発揮された時代。
初めて観て、それを表象するという意味でも傑作だとわかった。