Dachiko

ウルフ・オブ・ウォールストリートのDachikoのレビュー・感想・評価

4.4
この作品を見てジョーダン・ベルフォートという男の行為に憧れを抱くか抱かないかは、その人の良し悪し、もっと言うと底の深さ浅さを測るいい基準になると思う。

言うまでもなく、ジョーダン・ベルフォートという男は、褒められるのはその野心くらいの、最低な、道徳心など微塵も持っていない男である。いや、失ったと言った方が正しいのかもしれない。

彼もかつては真っ当な会社員であろうとしたし、妻を大切にし、薬を勧められても断るくらいの正しい心は持っていた。しかし不運にも最初に就いた証券会社が倒産し、生活を守るためにも、ひたすらに、金を稼ぐしかなかった。

その必死さが彼に誤った経験をさせてしまったのだ、と思う。元々彼は野心家であったし、多くのものを求める傾向にあったのだろう。金が貯まれば貯まるほどさらにそれを求める。薬や女に対してもそれは同じだ。

経験はつまり、レベルの底上げということである。美味しいラーメンを食べたら、カップヌードルが食べられなくなるような。それが野心家の彼に、より高レベルの欲望を植え付けてしまったのだ。現に彼は逮捕されるリスクがありながらも自分の会社を経営し続けた。

最初にもどるが、僕は残念ながら、憧れを抱く側である。彼の行為はまさに性にも薬にも溺れた乱痴気者だが、それは多くを経験した人間の行き着く先の1つである。そういうのに憧れを抱いてしまうぼくはまだまだ世間知らずの浅い人間なのかもしれない。