ホラーっぽい演出もあり、「ゾンビや幽霊?」「薬学サスペンス?」「狂気オチ?」と、視聴者を誘導するファクターが多い。
そこから衝撃的なエンディングへ向かう、という構築。
悪くはないんだが、モルグの警備員がこのオチだとやや難点に思う。
彼、何も悪いことしてないよね。
人の命を踏みにじったキャラクターへの報いとしてのエピソードで、無視する流れはどうなの?
そもそも、この段階でモルグの警備員に見つかったら計画は全部破綻するわけだし、この計画は雑すぎないか?
こんな手の込んだことをしないで、ストレートに殺害した方が確実だし自然な気がする。
「手の込んだシナリオ」って、どっかで破綻するリスクがあるわけじゃん。
そのリスクを冒す必要があるのか? っていうと無いよね。
他の方法でもいくらでも誘い出すことはできたし、殺害もできたよね、っていう。
ミスリードと推理を、っていうなら、そこへの解答もあってミステリーとして上質、といえる気がする。
また、真相の伏線がやや見せなさ過ぎかな。もうちょっと明記しないといけない気がする。
上質なミステリーの場合、「うわぁ! やられた!」と思う。
答えに到達できる情報が提示されていながら到達できなかった、負けた!みたいな。
だけど、これは最初から到達できるようには作っていないように思う。
「迷路を解け!」って言って、正解は「壁を壊せば到達できる!」っていう答えを云われてる感触で、やや観終わってからが残念な感触だった。
あと、狂気オチ誘導のための「~~という人物は存在しない」展開をやるには、目撃情報自体は集まってしまいそうな気がする。
校内でイチャついてる人が居た、だが、その人物が正体不明である、って感じになるのでは。
まあ、そこで捜査を打ち切るっていう読みとかあるなら良いけどさ。
“これが狂気オチでも幻覚オチでもないなら、ウソを吐ける人間は誰々しか居ない”が露骨すぎる。
演技、映像、演出は超一流。
その超一流だから見れる作品にはなっている。
冒頭で恐怖体験からモルグ警備員が事故死するというのもキャッチー。
ただ、シナリオの出来が良いかと言われるとノー。
ホラーとして、理不尽を楽しむものならばこれでも良いが、
ミステリーやクライムサスペンスの類としては、評価することができない。
良質な映画では有ると思うが、キャラクターの作り込みや作劇に難を感じる。