このレビューはネタバレを含みます
銘々選り取りの絵を持ち寄って…
展覧会が開かれる。
所狭しと並べられた絵。
同じものはひとつとして無い。
でも全ての絵には、同じものが描かれている。
最初の題材は、黙って遠くへ行ってしまった…
『あの人』だ。
ひとつの絵の前に立ち、その絵を眺めてみると…そこに描かれたあの人は、私の知る彼女とは別人みたいに思えてくる。
それは少女のようで…
それは娘のようでもある。
それは女のようで…
それは妻のようにも見える。
そして時には、母にもなる。
観る人によって姿を変える。
その在り方はまるで『女優』だ。
物語に必要なのは…
主人公と、それを彩る登場人物。
私の物語には、彼が登場するし…
彼の物語にも、私が登場する。
この世界での自分は、自分ひとりだけでは成り立っていないという事を…思い出させてくれる。
次に訪れたのは『家族』を描いた絵画たち。
家族とはなんだろうか…
血の繋がりや、紙面の上での関係?
なら、普通の人々で描かれた『断絶』は?
真摯に、相手を見つめる事ができるか…
なのかもしれない。
見ることで、相手を知る。
知ることで自分の中に、その人の場所ができる。
自分を分かち合えることができた相手を…
私たちは『家族』と呼んでいいんだと思う。
きっとこの作品の舞台は、存外に狭い。
なのに多角的で、深みを感じさせる。
決して派手ではないけれど…
とても優しくて、素敵な作品でした😊