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アメリカン・クライムのan0nym0usのネタバレレビュー・内容・結末

アメリカン・クライム(2007年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

観た後で、何も語りたくなくなった。

ああ、これが『絶句』ってことか…

この言葉を考えた人も、同じ気持ちを味わったんだろうなって…思考が現実逃避しそうになった。

今の私は、相当に人間が嫌いだ。
自分も同じ人間って事に、恐怖すら感じる。

寓話性なんて微塵もない。救いもない。
なのにこれは、現実にあった事件だ。

背景に戦争だとか宗教だとかもない。
そんなどうでもいい背景なんか関係のない、平穏な街の片隅で、実際に起きていたこと。

この作品は、映画として放映できる程度には表現が希釈されているものだし、Wikipediaに記載されている事でさえ『主なトピック』の羅列に過ぎないんだと思う。

現実での虐待は日常的に行われていて、シルヴィアは逃げることすらできなかった…それを考えると、目眩が起きそうになる。

ありとあらゆる卑劣なやり口で、よってたかって一人の少女を玩具のように弄び、壊していく。

少し前に書いた…ファウストでのメフィストの台詞を思い出した。

『人間は理性を、ロクなことに使っていない』

芯を食い過ぎていて、震える。
どうしてそこまで人を貶めることができるのか…理解できない私に、初歩的な部分から教えてもらいたい。

嬲り、甚振り…
被虐者の苦しむ様を見て、愉しむ。
その醜い『悪意』や『狂気』
人間の内側に存在している悪徳の病質。

炎628での蛮行や、今作の虐待…
その根っこに、それらが現れる。

環境が、教育が、状況が…
人にそれらを肯定させる。
同じ人間が、人間でなくなってしまう。

生存競争としての弱肉強食とは違う。
人間だけが持つだろう、残酷な精神性。

帯同してしまう周囲の人々には、人造の精神病質がどこまでも伝播していく、そんな恐怖を覚えた。誰にでも、この危険性が潜んでいるから。

正しいと思うことを、正しいと言えない。
口を噤めば、悪いほうに流されるのに…
それを正当化さえしてしまう。

観てからずっと、人間性って何だろうって考えが頭の中でグルグル回ってる。

私たちが正しいと思うことって、とても感覚的で…それらしい形にしてあるだけのもの。

だから、助けられない…なんてこともある。

いくら咀嚼しても飲み込めない。
苦渋が口腔に留まり続ける。

アメリカンクライムと括ってしまえる問題ではないはずだよね。実際に日本でだって虐待死のニュースは耳にすることはある。

人間社会の抱える…
絶望的なまでに深い病巣。

あぁ、私の中にもあるなぁ…受難の責苦を自傷行為みたいに見てしまうトコとか。誰もが、自分の見たい世界ばかりを見てしまう。

不都合な現実を直視しよう。
嘆きばかりが溢れてしまわないように。
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