カンヌでグランプリを獲ったコーエン兄弟の監督作。
現実の60年代フォーク界はもっと荒々しく、こんなにきれいなものではなかったという証言もあるが、これは青春映画なので「貧しく美しく」思い出される青春なのだ。
主人公は売れないフォーク・シンガーで「生活のため」歌っているとは言っているが、冒頭の歌からして内容は暗く、テーマも心情の吐露だ。
彼は住所不定で、友人や初対面のミュージシャンなどに泊めてもらって暮らしている。
彼女にも罵倒を浴びて追い出され放浪するが、猫とのつながりが微笑ましい。その名も「ユリシーズ」。
元ネタは『オデッセイア』だったのだ。ネットでこの指摘を見て、ようやく気づいた。航海に出て、帰還する。
なんだか不思議な青春もので音楽ものだという印象はあったが、これで少しわかった気がする。
それにしても、コーエン兄弟は、毎度、変な鑑賞後感(余韻)を残してくれる。
それがいい。