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ノスタルジアのtransfilmのネタバレレビュー・内容・結末

ノスタルジア(1983年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

日本では1984年に公開されたタルコフスキー監督の最後から2番目の作品。
ノスタルジアは「郷愁」と言う意味で、このタイトル通り、
故郷のロシア(ソ連)を懐かしむ一人の男性の、精神世界を描いている映画だと思う。
タルコフスキー監督自身は、この映画の3年後、1986年に亡くなっています。
「鏡」を観たときに感じた、ロシア人としての魂。
「ストーカー」を観たときに感じた、現在の文明に対する否定的・絶望的な視点。
この映画の内容からも感じることができて、
タルコフスキー監督の集大成的な作品ではないかと感じた。

「ストーカー」を観たときもうっすらと感じていたことだけど、現在の人間が築き上げた文明に対する考え方は、タルコフスキー監督がロシア人だから、ロシア人ならではのものだと感じる。そしてタルコフスキー監督自身も、そういう映画にしたくてそうしているように思います。

すごく勝手な解釈だけど、
ドミニコが演説で語る、"健全な人たち"はなんとなく民主主義の国々をさしているように思えたし、民主主義の国々が作り上げた思想を否定的にみているように思えた。
一方で、共産主義を肯定してるとも思わないです。
今世の中にある思想に対して否定的で、「原点に戻ろう」というのは、「民主主義」「共産主義」・・そういった思想が生まれる前に、戻ろうと・・いっているように思えました。

今現在でもそうだと思うんですけど、ロシア(ソ連)は「共産主義」の国であるがゆえに、世界から孤立している面があると思う。
僕は、今まで観たなかだとタルコフスキー監督の映画には、なんとなくだけど世の中に対する絶望感、そして孤独感みたいなものがあるとどうしても感じてしまって、それはタルコフスキー監督の心の中に、常にロシア(ソ連)と言う国の現状があったがゆえのことではないかな。と思う。
イタリアに「ネオレアレズモ」と呼ばれる部類の映画があるけど、タルコフスキー監督の映画も、すごく似てるんじゃないかなと個人的には思うんですけど、、、どうですかね?

この映画の後、亡命したそうなんですけど、
きっとタルコフスキー監督自身は死ぬまで心の中にロシアがあったままだろうと思う。そういう人でなければ、撮れない映画だったと思います。
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