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グランド・ブダペスト・ホテルのemilyのレビュー・感想・評価

4.2
国民的大作家が語る。1968年作家がまだ若いころ、休暇でグランド・ブダペスト・ホテルを訪れた。さびれたホテルのオーナーは使用人の部屋に泊まっていた。そのホテルの謎をオーナーが語る。時は1932年、ホテルは繁盛しており、ベルボーイとして働いていた。伝説のコンセルジュが父親代わりで、彼はマダムの夜の相手をしており、その一人が殺されてしまう。その遺言にあった絵画を受け取ったことで、容疑者として逮捕される。そこから二人の逃走劇が繰り広げられる。

まず3つの時間軸をアスベクト比を使ってうまく表現している。まず一番初めに出てくる現在が一番大きい画面、そうしてその中で語られる1968年が2番目の画面。1968年にオーナーによって語られる物語が3番目の画面と、物語の中の物語であることを、しっかり箱の大きさで表している。

言う間でもなく、ウェス・アンダーソン監督の作品である。人物像の左右対称の配置、物の配置、色の引き算、足し算、平面的な絵画のように続く映像、完璧な隙間の量、カメラワークが導くこの監督にしか出せない異次元空間。扉越し、窓越し、画面の中にさらに窓などで画面を作る閉鎖的な映像。画面から見切れる人がいたり、独創的な色使い。すべてにおいてこだわり抜いた映像美のオンパレードはどれもポスターにしたいぐらいにかわいくて、美しい。

コメディタッチで残酷な絵もあり、物語の中にもまた奥底に物語が隠されている。表面だけを見ればスウィーツのようにかわいく、しかし秘められてる物語を知れば、全く別の深い物語がある。何度でも楽しめる、またいろんな楽しみ方ができる作品。
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