NobuhisaTakasaki

旅人は夢を奏でるのNobuhisaTakasakiのレビュー・感想・評価

旅人は夢を奏でる(2012年製作の映画)
4.3
皆欠陥だらけ。糖尿病、×付き、夫婦不仲、アルツハイマー、ドラッグ、前科持ち……だけど、魅力的でいとおしい。最初はなぜこんなに素直に父親を受け入れてるんだろうと不思議に思い、作品にすっと入れなかった。けれど、物語が進むにつれ、各々の人間臭さが滲み出て、自然と笑みがこぼれてしまった。家族のあり方はいろいろあるにせよ、こんな家族も悪くないと思えてしまうのは、カウリスマキ監督の人間を描く力によるものである。ロードムービーでこれといって大きな事件があるわけではないが、随所に父親の不信な行動があり、緊張感を程よく保っている。ただ、父親をあの形で死なせてしまうのは、個人的には好みでないかも。ただ、自業自得でさらっと死ぬのは、あの父親らしいと思う。夫、父親としての葛藤を、凧揚げの暴走で表現したのはうまいなぁと唸った。一番お気に入りのシーンは、バーでの演奏。あ、やっぱり親子なんだなと感じさせられた。音楽ってほんとに素晴らしい。