みなりんすきー

インセプションのみなりんすきーのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
5.0
✨🥇🏆✨未だベストムービー不動の1位死守映画✨🥇🏆✨


『現実の世界とやらで──あなたは何を信じ 何を感じてるの?』

『”ゾウのことを考えるな” 何が頭に浮かんだ?人は常に思考の元を探る ごまかせない』

『覚醒中は脳の一部しか使われないが──夢では無限だ 何でもできる インスピレーションだ その連続が夢の世界さ 思ったことがそのまま起こる』

『列車を待ってる 遠くへ向かう列車を 望む場所へ行けるけど──どこかは分からない でも構わない』


■ あらすじ ■
人が眠っている間にその夢へ入り潜在意識に侵入し、他人のアイデアを盗み出すという犯罪分野のスペシャリストであるコブ(レオナルド・ディカプリオ)は、チームを組んでいるアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と仕事を通して日本の大富豪サイトー(渡辺謙)と知り合い、”インセプション”という最高難易度のミッションを依頼される。国際指名手配犯であり家族の待つ家に帰れずにいたコブは、成功すればサイトーの権力により犯罪歴を抹消してもらうことが出来る。コブは成功させる為に有能なメンバーを集め綿密に計画を立て実験を繰り返すが、その度に夢の中で妻のモル(マリオン・コティヤール)が現れ…


■ 感想 ■
『インセプション』
(『Inception』)

不動の断トツ1位映画なのにレビューが未熟だったので推敲をば。最近『テネット』公開にあわせてIMAXで復刻上映されていたので、足を運びました。過去作品を今IMAXで観られるなんて最高ですよね。

🍀【クリストファー・ノーラン監督について】
高校の時に初めて鑑賞してからというもの完璧に魅了され虜になりました。クリストファー・ノーラン監督をちゃんと知ったのも今作が最初。『ダークナイト』『メメント』『ダンケルク』『インターステラー』など名作揃いで、個人的に彼の作風がどストライクで…全部大好きな作品です。
彼はものすごく”時間の流れ”に強い思いや考えを持っている気がしますね。特に『インターステラー』や今作なんかは、時間、次元、時空などの存在がドンと真ん中にあり、その周囲で様々なドラマが繰り広げられていく。そしてその中には必ず、胸がギュッと締め付けられるような”愛ゆえの切なさ”が根底にあって、とても悲しいし辛いんだけれど、その繊細な描写により非常に美しく、私たちの心にスッと入ってくる。人々が生きているその時間と、愛と。人間は皆それに囚われ、依存して生きている。それは滑稽だけれど、美しい。

今作はSF大作としてだけでもとにかく問答無用の最高傑作、これ以上ないというくらいの出来栄えで、流石ノーラン監督が20年もかけて構想したというだけあって、脚本も演出も全て完璧に仕上がっている。気づけば10年前の映画だが、ここまで仕上げられるかと。圧巻でしかない。”単純な考えがまるでガンのように広がり”──”気づいた時には、それが現実になっていた”──劇中で出てくる言葉だが、これらの言葉はまさにこの作品そのもののような気がしてくる。

🍀【夢について】
”夢”という非常に現実的で私たちに身近なものがテーマなのも良い。実際に、夢の中で夢と気付いたり、夢の中でまた夢を見ていたなんて経験はいくらでもある。あの不思議な感覚。”どうやってここまで来た?”その考えすら浮かばない。だがそれを聞かれたならば、その瞬間に思考が覚醒し違和感を覚え、これは夢だと気付けるだろう。だが基本的にはいつから夢が始まっていたかなど、気づけない。それほど夢とは自然に発生するもので、私たちの日常に当たり前に溶け込んでいる。潜在意識が作り出すものだから、自分の夢でも自分では完璧にコントロールすることはできない。だけどそれがもし出来たら?その夢を他人と共有出来たら?夢の中は自由で可能性は無限にある。肉体も老いず、永遠に自由だ。そんな世界があるのなら、そこで幸せを見つけられたのなら、そこが”現実”になるのではないだろうか。

🍀【コブとモルについて】
コブとモルに関してがとにかく最強に切なくて、私は何度この映画を観ても同じところで泣いてしまう。マリオン・コティヤールは昔から好きな女優さんだが、今作で決定的なものとなった。彼女のどこか危うく儚げな雰囲気がたまらなく好き。今作を1回でも観終えたあとは、何度観ても彼女が登場するだけで胸が締め付けられる。本当に切なくて悲しくて、ラストでは涙が止まらなくなる。正直、今作にこの要素が無くコブがこの問題を抱えていなかったら、ここまでの評価には至らなかったかもしれない。SF大作として高評価だったのは間違いないが、ここまで圧倒的不動の1位ではなかった気がする。それくらい、個人的にモルの存在は私の中で大きく、この映画がもつ意味をより強く、また魅力的なものにしている。

夢、現実、虚構、逃避…一連の全てのテーマが私たちに様々な問いを投げてきており、またコブが夢と現実を行き来していく中で少しずつ罪の意識と向き合っていく様もドラマとして非常に良く出来ており、またコブとモルの過去に何があったかという物語のキーといってもいい部分のタネ明かしが本当に最後の最後なのも、また素晴らしい構成。序盤に明かして同情のようなものを誘ったり感情移入を促したりと、そういった安易な魂胆が全くなく、ただひたすらに私たちの興味だけを引き付けさせ続けるのだ。一体何があった?なぜコブは追われていて家に帰れない?モルはなぜ邪魔してくる?これらのなぜ、なぜ…が、現実と夢を行き来していく中で1つずつ静かに紐解かれていき、そして最後に全てが明かされる。その段階を踏んだ細かく丁寧な描写のおかげで、2回目以降の鑑賞では、「あぁ、だからこの表情だったのか」「この言葉はそういう意味だったのか」などなど、とにかく散りばめられた伏線に納得がいきまくり、より味わい深く鑑賞することができるようになっている。どこまでも傑作なのです。

🍀【結末について】
当時も物凄い物議を醸した、問題のラストについて。”あなたは、どっちだと思いましたか?”と、観た者の判断に委ね、結末はこうです!と決めつけてこない。考察が非常に捗るラストです。
これ、実は私の中では初めての、【何度も観ているうちに考えが変わった】映画でして。初めはね、”AかBか”に対して「Aだ!絶対にA!なぜなら○○が○○だから!」と、一応きちんと納得させられるような根拠も持ちながら、Aだと自分の中では決定していたのです。というか、そうじゃなければ辛かった、そうであってほしいという願いの気持ちの方が強かった。ただ、今作は冗談抜きで20回は観てるんですけど、5回目あたりから、その考えに変化が出てきまして。「これ、もしかしてAかBかじゃないな」と。そもそもラストの問いかけが、”あなたは、どっちだと思いましたか?”ではなく、”あなたは、どう思いましたか?”なのでは?と。AかBかの2択なんかじゃなかったんです。何故なら、彼は最後、それを”見ることもしなかった”から。これまでなら判断をする為にその行為をしていたにも関わらず、あの瞬間だけは彼は、どうなるか見届けなかった。つまり、もう彼の中であの瞬間は”AかBか”が大切なんじゃなかったんです。大切なのは、もはやそこではなくなってた。そう考えたら、仮にアレがそのままだったとしても、彼にとってはもう良かったんだと。
この考えに至ったのは本当に何度も観たからなんですよね。勿論、1回でこう考える人も中にはいると思うんだけれど、少なくとも私は最初のうちは無理でした。そのくらい訴えてくるものがデカすぎて、受け止めきれなかったというか。どっちかじゃないといけなかった自分がいたので。こんな風に考えが後から変わった映画は後にも先にも今作だけだと思います。

🍀【余談】
高校の時初めて今作を鑑賞した際、サイトー演じた渡辺謙のことが大好きになりました。それまでも知ってはいたけれど、今作のサイトー役は素晴らしかった。序盤のあの特殊メイクも凄いですね。あまりにも出来が良すぎて、共演者やスタッフ達も最初は彼だと気付かず、「ケンだったの!?」と驚かれたらしいです。
英語もものすごくて丁寧で、ネイティブというよりどちらかというと教科書通りといった発音なんだけれど、如何せん演技がとにかく良くてレオ達と会話している様子も物凄く自然。レオも会見などで渡辺謙を絶賛しており、お互い深い演技論も交わし、「日本人として誇りに思うべき俳優さんです」と何度も熱弁したそう。なんだかこちらまで嬉しくなるお話ですよね。渡辺謙さん、天晴れです。

🍀【最後に】
もしこれから観る人がいたら、是非、2回は観てほしい。本当に観る度に味わい深くなる素晴らしい映画です。