ハター

アクト・オブ・キリングのハターのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
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言葉にならない。とてもじゃないが、映画として見る事はできなかった。なぜこの作品を公開するにあたったか、娯楽目的と考えがたい事は明白、いや、愚問の域ですね。虐殺がネタのノンフィクションを加害者本人が演じる作品など、もはや私が考える映画というジャンルの枠を優に越えています。
本作で扱う事件の予備知識がほとんどないままに観た私としては、人間に潜む狂気なる部分と、後先への不安感に酷く苛まれた。この作品が現代の世に出た事により、このインドネシアという国のみならず、広く世界へ影響を与える事も考えると、良し悪し云々、何かしら発起剤になるのでは。そう思わせざるをえなかった。受け取り方が過ぎているかもわからないが、観ている最中それを直に感じ、満員の映画館で恐らく傍から目に付く程そわついてしまった。いち映画として観る、史観を含めて観るなど、端的な部分に絞ればまだよかったかもしれないなどと、後になって考えてます。
しかし、ドキュメンタリーというのは恐ろしい。何せ事実である故に、それを直に捉えてしまう。映画として作る上で必要な脚色や演出があるとは思いつつも、根底に潜む本来のメッセージが自然と浮かびあがっては銛の如く突き刺さる。役者でも何でもない人々の虐殺の再現模様は滑稽と言えばソレですが、私感としてはそれがなかなかに気持ち悪い。特に無垢な子供がこの作品に携わる姿は観ていて辛い。
オッペンハイマー監督は、あくまで真意を伝えるというよりも、この映画に興味を持って観る人々に問いを投げかけた。享受する事によって産まれる物は果たして何か。そういう意味での問題作ですね。
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