OASIS

MUD -マッド-のOASISのレビュー・感想・評価

MUD -マッド-(2012年製作の映画)
4.0
アメリカ南部の小さな街に住む二人の少年が、ミシシッピ川に浮かぶ小島の上で木に引っかかっているボートを発見する。冒険心をワクワクさせる二人だったが、そこには既に一人の男が住み着いていた。「マッド」と名乗るその男と少年達は次第に心を通わせていく、という話。
監督は「テイク・シェルター」のジェフ・ニコルズ。

主演の皆大好きマシュー・マコノヒーはもちろんだが、何より少年役二人が素晴らしかった。
子役の使い方、演技の引き出し方が上手いのは名監督の証だというのは間違いないようで。
「トム・ソーヤーの冒険」のようなジュブナイルモノのようだけど、成長しているのは少年達だけではなく、実は大人達の方が信じる事についてハッと気付かされてしまうような心地良い余韻を残す映画でした。

少年エリスは、マッドを信じる事によって自分の中の何かが変わるかもしれないという期待と憧れを抱き、彼と関わる内に心が強くなった気になってしまう。
甘い恋を味わったり、大人の中に混じって遊んだりする中で確実に成長している筈なのに、待ち受けるのは青春の痛みや愛し続ける事の苦しさ。
そんな彼を諭すように愛し愛される事の素晴らしさを話す大人達もまた、本当の愛については疑心暗鬼なまま。
そして、心から相手を信用できた時に感じる「愛している」という言葉の重さ。
憧れだけでは大人になれない少年達と、欺瞞と向き合う大人達両方の葛藤を静かに感じさせてくれる良作でした。

画面に現れるだけであらゆる事を信じさせてくれる説得力を持つマコノヒー兄貴と、ラストで一番カッコいい役を持っていく「暗殺者」のサム・シェパードに痺れる一本。
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