emily

17歳のemilyのレビュー・感想・評価

17歳(2013年製作の映画)
4.1
名門高校に通うなにの不自由もない17歳のイサベル。夏のバカンスで訪れた避暑地で初体験を済まし、そこからお金をもらって不特定多数の男たちと売春をするようになる。しかしある日行為の最中に心臓発作で初老の男が亡くなってしまい・・

17歳の微妙な心情を性生活の部分にスポットをあてて綴るオゾンが見せる思春期。

何より素晴らしいのが、売春を始める理由を全くか明かさないところだ。主人公の心情は全く語られない。大人たちは口をそろえて「なぜ?」という。それもそのはず。彼女は名門校に通っており、容姿端麗、お金に不自由しているわけではない。全く売春をする理由が見つからないからだ。物事には何かしら理由が必要だし、特に映画となると、その理由を何かの形で示さないと、観客は混乱してしまう。

しかし17歳である。理由もなく何かをしたくなる年頃だし、それが自分でも明確に全く分かってない場合も多い。観客も大人たちと同じように「なぜ?」という自問自答にかられ、何かしらその理由を見つけることになるだろう。
その答えを見つけるためには伏線をたどり、また自分の17歳のころを思い浮かべるのではないか?その作業を観客に求める作品である。それが素晴らしい。答えは一つではないし、答えなんてないかもしれない。そんなことはどうでもよい。彼女をみつつ、自分の17歳と向き合うことを強いられるのが、この作品の凄みではないか。

音のチョイスも思春期の危うさを物語っており、売春をしてると分かった後の大人たちの距離の保ちかたも、冷ややかで面白い描写であった。季節の移り替わりにより、しっかり区切りをつけて、それでも時間が流れていくさまを描いてる。17歳、そのときは長く感じ、早く大人になりたいと思った。しかしその1年は長い人生のほんの一瞬だ。人生のうちの時間配分を老女との対比で映し出すラストシーンも美しい。

何かを感じるか?
何を感じないか?
オゾンの描く17歳は危うくもエレガントで、そうしてどこか芯のある割り切った強さがある。

「17歳は真面目じゃない」ランボーの一節を引用して、軽薄で、賢くスマートな17歳。あなたの17歳はどうでしたか?
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