世界は雑然としている。
昨日まで信じられていた事象は解釈を変えて全く別物として罷り通る。
真っ直ぐに通っていたお気に入りの道路は、長い時間を掛けて作った跨線橋に合流してついに曲がりくねった道になってしまった。
建物は急に無くなったかと思えば色形を変えてまた立ち上がり、これまでは無かった光の明滅を付加するようになった。
街ゆく人の歩速も日によってキビキビしたりヨタヨタしたり、笑っているのか悲しんでいるのか。
この地上の全ては真理とは程遠いノイズに満たされている。
宇宙の変化は相対的に見れば緩やかで、全ては法則で説明された理論で出来上がっている。
僕は真理に限りなく近い何かに包まれたい。
人の感情はまるで行先のない迷路だ。
嬉しくもないのに笑ってやり過ごしたり、
怒っているのに口では怒ってないという。
全ては要素によって形を変える。
嬉しいの反対は悲しい、笑顔の反対は泣きっ面。
ある質量には同じ質量、ある性質には同じ性質。
あるいは全く同じ質点・質量による引力・斥力。
そうやって何でもシンプルに割り切れたなら、
きっと僕も宇宙へ飛ばずに済むはずなのに。
君のことを表す言葉があるかもしれない。
でもそれは確かな言葉じゃない。
だから現象についてだけ簡潔に述べる。
今僕は、悲しくないのに泣きそうだ。