HicK

ヒックとドラゴン 聖地への冒険のHicKのレビュー・感想・評価

4.4

《傑作シリーズの締めに相応しい》

【冒頭】
バーク島のファーストカット。色々てんこ盛りになってきた島を楽しく見せている反面、目に見えて「もう保護には限界がある」というきびしい現実も感じ、結末を暗示しているようで心が痛くなった。…糞害とかすごそう 笑。

【共存】
今回は「悪役グリメル=過去のバーク島の体制」であり、共存の是非が問われる。彼の言う「共存は文明を破壊する」というセリフは冒頭のバーク島にも少なからず表れていて、ドラゴンたちにとっても同様なのかもしれない。ヒックはドラゴン主体での共存を希望するが、そんな中、トゥースは共存による被害者に近い描写が続いていく。(それにしても聞き分けのいい島民 笑)。

【シリーズに相応しい完結】
原作は未読だが、ドラゴンたちの立場を尊重させるヒックたちを描いてきたからこそ、完結作ではやっぱりこう言う切ない展開になるよなと思った。その点、とても納得でき、完結に相応しい物語だった。案の定、涙。

【一貫したストーリー展開】
前回までもそうだったが、今作も冒頭から作品の方向性が一貫していて、結末がバレバレと言ったらそうなのだが、それでも結末に向かって真っしぐらのストーリーテリングは個人的には大好き。ピクサー作品ですら、子供向けに一旦テーマから離れたコメディーやアクションを入れていたりするのだが、やっぱり自分はどの瞬間もテーマに沿った展開を持っている作品に魅力を感じる。今回もそんな無駄のない運び方が素晴らしかった。

【ヒックの成長記】
ヒックの人生を見届けた感動もあった。1作目では劣等生扱いだった奴が、島民の先頭に立ちドラゴンと戦う。2作目では王になり、ドラゴンを守る戦いに。今作では「ヒックの行動=島民たちの運命・ドラゴンたちの運命」になり、迷いながらも責任を理解し、それぞれの最善の道を探し出そうとする彼は頼もしかった。続編でよくありそうな「安易に変な道にそれる」「勘違いした思いつきで大惨事を招く」ような描き方じゃなかったので嬉しかった。もちろん、他のキャラクターの成長も一目瞭然。カッコよかった。

【トリビア】
ドラゴンの巣に前作の悪役に従えていたドラゴンの王がチラッと映っていたのも嬉しかった。彼は強制されて悪役に従っていただけなので、救われたような気がした。

【総括】
相応しい完結作。ドラゴンたちがもたらした恩恵を切り離し、本当に彼らにとってのベストは何か?を考え出すヒックたちには成長を感じる。また、彼らのドラゴンたちに対する情も私たち観客の思いと重なり、切なくも感動的だった。
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