こたつむり

ヒックとドラゴン 聖地への冒険のこたつむりのレビュー・感想・評価

4.2
♪ 相変わらず あの頃に話した
  夢を僕は追い続けてるよ

三部作として最高の着地点でした。
一作目、二作目の不満を解消しながら、未来へと繋ぐ渾身の一撃。見事ですね。

しかも、ビジュアルもググンと綺麗になって。
家のテレビでも唸ったくらいですから、劇場で観ていたら手足が震えるどころか、魂がブルッていたかもしれません。ぐはは。

また、成長譚としても素晴らしく。
ヒックとトゥースの関係性に一歩踏み込んでいたのです。一作目では禁断の「ペット」発言もありましたが(韻を踏んだギャグだったようですが)本作では“魂での結びつき”を感じました。

それに、物語の選択と排除も見事に機能。
ひとつひとつを丁寧に積み上げながらも、主軸が際立つようにコントラストを付けているのです。だから、無駄な部分がないんですよね(あの双子がウザいのは大爆笑)。

特に良かったのは“矢面に立つのは男でも、彼らの手綱を握っているのは女性たち”とさり気なく伝わってくる展開。個人的には、これが理想の男女の姿だと思いました。

あと、地味ながらも敵キャラクタも好印象。
きちんと“美学”を持ち、知恵を絞る様が描かれていますので、相手に不足はないのです。正直なところ、もっと掘り下げても面白かったと思いますが…それだと冗長になっていたんでしょうね。やはり、選択と排除は大切です。

まあ、そんなわけで。
2作目を鑑賞してから間が空いてしまったため、色々と忘れていた部分もありましたが、それでも十分に楽しめた完結編。出来ることならば、三部作まとめて鑑賞した方が感慨深いと思います。

ただ、あえて穿った視点で言えば。
ディズニーやピクサーのような“キャッチーさ”には欠けていますね。でも、それが良いのです。

華には華の良さが。石には石の良さが。
同じ人間が一人もいないように、本作の素晴らしさは“キャッチーさ”とは別にあるのです。偉い人にはそれが分からんのですよ。
こたつむり

こたつむり