むらむら

福福荘の福ちゃんのむらむらのレビュー・感想・評価

福福荘の福ちゃん(2014年製作の映画)
5.0
森三中の大島美幸が坊主頭で男装して主演。工事現場のオッサンを演じる、という、どの層にニーズがあるのかサッパリ分からない映画。相当なマニア向けか!?

劇中、大島を被写体にした写真集の出版しようというシーンで、そんな俺の感想を見透かしたような編集者の台詞がある。

「太ったオッサンが主役の写真集なんて誰が興味を持つんだ?」

加えて、共演は小太りオッサン界の巨星・荒川良々。MCUですら、歴代最低興行収入は「インクレディブル・ハルク」なんだから、如何に魅力的な役者といえど、坊主のオッサン二人の映画は興行的にちょっと厳しいのでは……俺がプロデューサーだったら、「志尊淳くらい入れましょうよ」って主張したくなりそう。

ただ、改めて映画を観ると、まさに大島がいないと成り立たないほどにハマり役。しかも、荒川良々と、兄弟かと見紛うくらい見分けがつかない。
これ海外上映もしたらしいけど、観た人は混乱したろうなぁ……。あまりに似すぎてて、俺がジョージ・ルーカスなら、アミダラ女王を荒川良々、その影武者を大島美幸に演じてもらって、日本版スターウォーズを作りたくなった。

そんな一般受けしなそうな映画ではあるものの、この映画の変な人たちが巻き起こす、ちょっとズレた物語に、とても引き込まれる。

大島演じる主人公の福ちゃんの下宿「福福荘」には、元下着ドロでお遍路が趣味の男の子、大蛇をペットにするヒゲといった癖のある人物が住んでいる。俺らの周囲にはいないけど、もしかしたら日本のどこかにいるかも!? 程度の絶妙なキャラクターたち。そして、その福ちゃんに妙な魅力を感じるカメラマン志望のOL(水上あさみ)。みんなリアリティがあって、まるで「福福荘」が実在するんじゃないかなーって気分にさせられる。荒川良々も、ボケだと思って鋭いこと言うシーンは、特に上手い。

最近ホラーとかSFばかり観ていたので、たまにはこういう作品も良いなーと思いました。

途中、○を出さないカレー屋ってのが出てくるんだけど、これ本当に白金台にあるんだってね。俺、昔笹塚に住んでたとき、オッサンが一人でやってる最高のカレー屋があったんだけど、そのオッサン、カレールーを作ってる最中に心臓発作で亡くなり、突然閉店したんだよなー。やっぱカレー屋は、無意味な拘りがあったほうがいいよね。

[追記]この藤田監督の「でんきまむし」という作品にエキストラ行きました。もし興味ある方がいれば、詳しくは僕の「新喜劇王」の感想をご覧ください。その時から、藤田監督は大好きな作家の一人です
むらむら

むらむら