よしまる

ゴーン・ガールのよしまるのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
3.6
 嘘にまみれた夫婦、狸と狸の化かし合い。ホラーでもありコメディでもある、まこと評価に困る作品だった。

 誰の目にも幸せそのものの夫婦。顔の好みはちょっと横に置いといてw
 ロザムンドパイク演じる妻エイミーは絵本のモデルとして幼少時より有名人、しかもその作家である親は娘を利用しまくる酷いやつ。そんな彼女を暗闇から救ったのが夫ニック。けれども一見完璧なイケメンをベンアフレックが演じているので、最初っから何かある腹黒感がバレバレ💦

 物語は妻の突然の失踪に始まる。

 前半は消えた妻の足取りを追うサスペンス。残されたヒントや、周りの人たちの証言を追う一方で、ニックには愛人がいたことや、エイミーへのDV疑惑が持ち上がり、事態を見えにくくしていく。

 この伏線の張り方が、まさにフィンチャー節。見方によっては意地悪なミスリードで気分悪いわってなるのだけれど、そこは大人しく騙されるのがフィンチャー作品を観るお作法ってもんだろう。
 
 ゴーンガールというからには失踪を最後まで引っ張るかと思いきやそうでもなく、後半はサイコホラーにテイストを変え、話がどんどんとあさっての方向へ転がってゆく。これがなかなかに面白い。
 双子の妹、敏腕女刑事、やり手の弁護士とニック側には最強の布陣が整うが、それをも上回る狂気の嫁。

 ま、側から見ているとどっちもどっちで「やれやれだぜ」ってところ。本人たちにとっての最適解がそこにあるのならそれ以上は言えまい。とは言え結末はさすがに読めなかった。

 ストーリー的には双子の妹がもう少しスパイス効いててもよかったかな。ちょっと出来過ぎな娘で、普通にかわいそう。

 何もかもさらけ出して想いをぶつけ合って、喧嘩してでも仲良くいるってのも夫婦の形ではある。でもそのせいで互いの醜い部分を見てしまったうえで、あらためて仮面を被りなおすなんてことは現実的には難しいのではないだろうか。

 ボクの場合はどこかお互い妥協して、場合によっては嘘をついたり見て見ぬ振りをしたり、あるいはストレスにならない程度に辛抱してみたり。そんなふうに居心地の良い関係を見つけ出すのもそれはそれで思いやりなんじゃないかなと思ってたりする。
 それを愛と呼べるのかどうかはわからないけれど。