Kou

ゴーン・ガールのKouのレビュー・感想・評価

ゴーン・ガール(2014年製作の映画)
4.7
「デヴィッド・フィンチャー監督作品の中で
好きな作品を2つあげて下さい」


そう言われたら、まず『セブン』と『ファイト・クラブ』があがるだろうけど(自分は)本当にその2つなのか?っていう事で視聴。


いやー、良い勝負でした。
好きな作品を3つにせざるを得ない名作。
こういうスッキリしない作品、普段自分は嫌いなんだけど、これは名作でした。



この作品の魅力は何と言っても、
『誰に感情移入しても最後まで
フラストレーションが解消できない点』と
それを生かしたモヤッと感で、観る人によって違った感想を抱ける点だと思う。



例えば、
「結婚するのが怖い」
「元々浮気する男が悪い」とか。
レビューを見ると上の感想が多いように見受けられたし、一緒に観ていた彼女は現に下の感想だった。
そういった感想も理解できるし、
そう思うもよく分かるような作品にできている。そこがこの監督のすごいところ。



実際、自分がこの作品で一番感じられたのは、
みんなと同じく“恐怖”です。
でもそれは、妻に対してではなく、
『マスコミの過剰な報道』にでした。



マスコミは『世論』でありながら、
それを望むように仕向けることも出来る。
そしてそれを見た人は、
放送されているものを
そのまま『真実』だと信じてしまう。

実際は違ったとしても。そこが怖い。



この映画でスマホを使ったシーンもあったが、あれもそう。事実あのシーン、ニックは女性とただ喋ってただけ。だが報道では、
“妻が失踪中にも関わらず女性と楽しんでる男”
に映ってしまう。



そして、作品を見終えて一段落。
「ふぅ、すごいものを見たな」
「ニュースの偏向報道って怖いなあ」
そう思いつつ、ふとDVDのメニュー画面を見る。
そこに写ってるのは『ニュース映像』を模したメニュー画面だ。

ドキッとしたよね。
まさか、DVDのメニュー画面にさえ
メッセージが含まれていたとは。



それらを踏まえると、
『昨今の情報化社会に警鐘を鳴らしつつ行き場のないフラストレーションにひたすらモヤモヤする』
という、一見後味悪いだけと思いきや、
そのモヤモヤの中にこそメッセージが隠れているという、練りに練られた脚本であることがよく分かりますね。

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普段DVD特典の
『監督の音声解説』は見ないんだけど、
今作は面白かったのでちょっと見ました。
見てみると監督は、男女間で感想が違ってくるよう“作為的”に作っていることが分かりますよ。



これは分かりやすいシーンだけど、愛人が家にやってきてニックを誘惑するシーンとかもそう。
監督曰く、観客を即座に
二分するような人が欲しかったそう。

「女性は“あいつは最低の男ね”と
腕を組み、ふんぞり返る」
「男性は肘をつき、顎をのせて前かがみになり
“気持ちはわからなくない”と言う」と。

完璧な配役(エミリー・ラタコウスキー)により、
この映画のレビュアーを実際に二分させているところを見るに、監督の手腕に驚かざるをえないよね。ほんと面白い作品。
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