ギズモX

アントマンのギズモXのレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
5.0
「"小さくたって大きなことができるんだ!!"」
 『きかんしゃトーマス 魔法の線路』より

祝!レビュー200本目!🎊
ようやくここまでこれた。
皆様に感謝を申し上げます😊
今回はMCUで一番好きなこの映画を。

何度見ても最高な気分にさせてくれる大傑作だ。
未知の世界にへと誘う革新的な映像表現。
一人のコソ泥が愛する娘のためにヒーローとなるストーリー。
でも何がいいって、やっぱりおもちゃのトーマスが登場するあの最終決戦っすよ。
あの場面を最初に観た時はマジでガチ泣きした!
子供の頃に頭の中で思い描いていたものがそっくりそのままスクリーンに映っていたからだ。
みんなは『エンドゲーム』や『NWH』とかで興奮していたと思うんだけど、僕はこの『アントマン』でハイになっていた。

実は、当初の予定では『カーズ』のキャラクターがあれをやる手筈だったが、製作陣がマテルと話をつけた結果、トーマスがゲスト出演することになった。
この判断は大正解だった。
『機関車トーマス』のファンである僕にとって、あれは『ファイトクラブ』でブラッドピットがブルースリーを真似てたくらい大きな意味を持つ。
これは単なる偶然の類いの一つなのかもしれないけれど、でもそれだけだったとは思えない。
なぜなら、この映画は劇場版きかんしゃトーマス第一弾『きかんしゃトーマス 魔法の線路』の幻の完全版を再構築しているからだ。

模型の世界と実写の世界が融合した物語が繰り広げられる『きかんしゃトーマス 魔法の線路』は、試写会で映画を見にきたチビっ子達が悪役にビビった&泣いたことで、製作陣が「この映画は子供向けではない」と判断したため、公開直前ギリギリまで子供向けに再編集し直したVer.が劇場公開され、そして元の完全版ではP.T.ブーマーという実写の悪役キャラが登場する予定だった。

そのP.T.ブーマーという男は、若い頃にターシャという一人の女性に片想いしていたが、魔法の汽車のレディーを所持しているバーネットが彼女と結ばれたことが原因で彼を逆恨みしている嫉妬深い設定の男であり、一度破壊したレディーを再び探し出し完全に破壊することでバーネットへの長年の恨みを晴らそうとしていた。
それはまるで、自分を認めてくれなかったピム博士や二代目アントマンとなったスコットに憎悪し、己の野心に取り憑かれ、イエロージャケットを使って世界を破壊しようとした今作のヴィラン、あのダレンクロスのように。
また、劇場公開されたVer.では、ディーゼル10というイエロージャケットみたいな特徴的なアームが付いたディーゼル機関車がその役柄を引き継ぎ、バーネットが運転するレディーやトーマスと激しいチェイスを繰り広げた。

更に『魔法の線路』では、アントマンが小さくなったり、おもちゃのトーマスが巨大化したのと同じ様に、登場人物がトーマスの舞台であるソドー島に入る際に魔法の粉によって体が小さくなったことを仄めかす描写がされていたり、トーマスが魔法の線路を越えて現実世界にやって来るシーンが導入されている。
イエロージャケットに大したダメージを与えることなく脱線してしまったのは『魔法の線路』が大失敗したのを表しているかのようだ。

その他にも、先程の文章で名前がでてきたバーネットには、アメリカンニューシネマの傑作『イージーライダー』で"キャプテンアメリカ"と呼ばれたあのピーターフォンダが演じており、アントマンはこの映画の直後に本物のキャプテンアメリカと共闘することになるから、ここも何かの縁を感じる。

スコットとトーマスの間には一つの共通点がある。
それは『きかんしゃトーマス』のメインテーマでもある"やつにたつ存在になる"ことだ。
スコットもトーマス達も自分勝手な連中で、彼らは話の中で何度も道を踏み外して、犯罪に走ったり、事故を起こす。
でも、そんな奴らだからこそ、様々な経験を経て仲間と協力することを覚え、本当の意味で人の役に立とうとする。
これはそんな成長物語なんだ。

もちろん、この考察は憶測の域に過ぎない。
『魔法の線路 完全版』のワークプリントが明らかとなったのはこの映画が公開された後だし、アントマンの製作者も、トーマスの製作者も、この件にあまり触れていないから真相は魔法の粒子の中だ。
でも、とある小さなヒーローの活躍は、とある小さなきかんしゃの無念を晴らしたのだと、僕はそう考えている。

これは吹き替え版だけの話。
アントマンがイエロージャケットに向けて放ったこのセリフ。
『魔法の線路』でも、赤色のボディのジェームズがディーゼル10に向かって同じセリフを喋るんだ。

「いじめっ子は最低だぞ!!」
ギズモX

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