ギズモX

落下の解剖学のギズモXのネタバレレビュー・内容・結末

落下の解剖学(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

去年のパルムドールを受賞したサスペンス映画。

"雪が降り積もる人里離れた山荘から、一人の男が転落死する事件が発生。警察の捜査が進むにつれてその男の妻に殺害容疑がかかり、真相は法廷に持ち込まれる。
唯一の証人は事件の第一発見者である11歳の息子だった"

自殺か他殺かという事件の真相ではなく、"何故一人の男は死に至ったのか"という人の深層心理を暴いた異色の法廷劇。
本作の中における事象はその全てが不可解で、真実に近づいたとしても多くの謎が残る仕組みになっている。その為、点と点を繋げるには陰謀論のように憶測を重ねるしか方法がなく、故にこの物語に真相はない。
ただ一つ、理解できるのはあの山荘は"バービーランド"のような逆転社会であり、それまで当たり前にしてた認識が家族の仲に致命的な亀裂を生んだ。そしてそのことに誰一人として気付いていない。

個人的には、被告人として立たされる女性小説家が、Xで数々の問題を起こしたあのJKローリングと重なって見えたので全く共感できなかった。
両者共に何かに対して無自覚なまでに不寛容で同情を買う能力だけは長けている。
騒動が起こる2020年まで仲が良かったスティーブンキングの名前を劇中に出してきたあれは意図的なものか、そうでないのか。
女性小説家がTERFだと明言されることはないが、逆を言ってしまえばTERFであることを否定していない。
どちらにしても真相は闇の中だ。

人気のない山荘に響き渡る不安定な旋律が、果てしなく続く空虚な現実を露わにする。
結末がどうなろうと関係ない。
得るものはなく、残されるはその人の本質のみ。
ギズモX

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