dm10forever

アントマンのdm10foreverのレビュー・感想・評価

アントマン(2015年製作の映画)
4.1
【ミルフィーユ】

先日の地震に伴うタイムラグもあり、復習の意味もかねてみた「アントマン」と「アントマン&ワスプ」のレビューがところどころリンクしてしまうかもしれませんがご容赦を・・。

いや~これも敬遠していた一本でしたが、やっぱり観てよかった。
というのも、単に「アントマン&ワスプ」との繋がりの確認という作業的な意味合いではなく、この一本自体の位置づけが非常に興味深いと感じたからです。

結構耳にするのが「コミカルヒーロー」っていう表現なんですが、それ自体は「うん、その通り」という感じ。優しくて、根はまじめで、だけどちょっと抜けてるスコットや、堅物なハンク・ピム博士、さらには「人間ジュークボックス」ルイスたちの掛け合いを見ていると、自然とニヤニヤしながら観ている自分に気がつく。

ただ、この作品のド頭から実はMCUとの繋がりがこってり描かれていて、これが単なる「アベンジャーズのスピンオフ」的な位置づけではなく、実は「アベンジャーズ」のメインストリートを何度も横切るかのような絶妙な内容で、この時点で既に「インフィニティウォー」への伏線すら垣間見える作品となっていることに感心した。
まず冒頭のやりとりでいきなりハンク・ピム博士が自身が独自に発明した「ピム粒子」を巡ってハワード・スタークと対立するシーンから始まる。
実はこの対立こそ、後々のアントマンの立ち位置にも大きく影響する流れを作っていて、続編の「アントマン&ワスプ」でのハンクとホープの置かれた現状にも納得がいく話になっていた。
また何故ハンクがスコットを2代目アントマンにしようと考えたのか?という点。
単に彼の能力的なもの(頭脳や盗みに入る技術等)に対して魅力を感じたという事ではなく、娘の為に全てを犠牲にして頑張れる(根底に守るべきものがある人間)だから選んだのだ。能力的な面で適正を考えることは、彼にとって「第二のダレン・クロス」を生んでしまう危険性もあったしね。何より自身の娘とうまくいっていないハンクにとっては「娘の為に頑張れるスコット」にいろんな意味で自分を投影し、そこに託す決断をしたんだと思う。
そして、結果的にこの「スコット×キャシー(娘)」の関係性が、物理的な不可能を可能にするというウルトラCにも繋がり、またそれこそがもしかするとアベンジャーズ4の最大の伏線にまでなりうるとても重要なキーにすらなっている可能性もあり・・・。

1話完結モノのヒーロー映画としても及第点の内容であったし、登場人物を極端に増やさなかったことで「アントマン」の世界観に没入しやすかったという点でも好感が持てる。
そして「絶妙な塩梅」で「アベンジャーズ」との接点をサラッと作るあたりも矛盾なく入れて分かりやすかった。
そして何より表面的な分かりやすさとは裏腹に何層にも織り込まれた伏線の上手さは、実は最近のMCUの中でも上位に位置するほど絶妙で、徐々にシリアスになっていく世界(エイジオブウルトロン→シビルウォー)を別の場所から別観点で感じることができる作品でもある。これは今後の流れを考えても見ておいてよかったと思う。
dm10forever

dm10forever