ジュリー

リスボンに誘われてのジュリーのレビュー・感想・評価

リスボンに誘われて(2012年製作の映画)
4.1

心惹かれる映画でした。スイスベルンの作家パスカル・メルシエの小説『リスボンへの夜行列車』(2004)を映画化した作品だそうです。

日本語タイトルはなんだかロマンス小説の様で『リスボンに誘われて』。確かに、初老でもジェレミー・アイアンズ演じる魅力のある老人が発作的に、仕事を投げ出して夜行でリスボンへ行き、上司の校長先生に毎回言い訳するのは、その面があるのかもしれません。

若くないからこそ、発作的に何かにつきうごかされてリスボンまで行ってしまう、ということに憧れる気持ちはわかります。でも、それがある人物(過去の青年アマデウ)のことを調べ歩く、という旅に感情移入するには少し背景が希薄でした。

ポルトガル革命時期に屈折した形でレジスタンスに加わり、ありあまる野心と、才能を燃焼しきれなかったアマデウ青年と、学問の才能に恵まれながら公私ともに確信がもてない今のグレゴリウス老人の人生を追ってゆく、重厚ですがロマンチックな要素もある映画になっているので、見やすい作品です。

この映画をきっかけに、ポルトガルのサラザール独裁政権(1932-1974)、ファシズム独裁政権下の文化、生活を描いた古い映画があれば見てみたいと思います。

ヨーロッパで最後まで植民地を手放さなかったポルトガルで起こった〝無血革命〟そのものについて知りたいと思います。カーネーション革命が何であったのか。

さいごに、眼科医を演じているマルティナ・ゲデックがとても良い感じでした。
ジュリー

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