ハテナ

スウィング・オブ・ザ・デッドのハテナのレビュー・感想・評価

4.3
ゾンビだらけの世界を生きるおっさん2人の話。
ボクも観るまで勘違いしてたんですけど、この映画、ゾンビ映画じゃないです。中年男性による青春とその崩壊、絶望を描いていて、よくこれを2012年に撮れたなと思います。'99年にブレア・ウィッチを撮ったのを知った時にもビビったけど、これはそれとはまた別方向に驚きを隠せませんでした。

現実主義でサバイバル能力も高いベンと、ロマンチストでトラブルメーカーのミッキー。同じ野球チームのバッテリー(しかもミッキーは投手といっても冴えない中継ぎ)という関係でしかない二人が、比較的人の少ないであろう自然の中を移動しながら、あてもなくサバイバルをし続けていく。
この作品はそんな2人の人間模様がメインで、味付け程度にゾンビで荒廃した世界があるだけ。極限状態の世界を2人きりで生きながら、たまたま傍受した無線にうかれるミッキーと、得体もしれず、関わるなと言ってくるような相手なので意に介さないベン。ミッキーは現実を受け入れられず音楽に逃げてばかりですが、とあることがきっかけで現実を受け入れ、ひとつ成長します。

そんな退廃した中でも眩しくあたたかな生き様で終わるのかと思いきや、突如として訪れる地獄。欲を出すミッキーも悪いと言えば悪いのですが、向こうも行動原理は分かると言え初手それかよ、と思わなくもない。
そうして何日経ったかもわからないような地獄が続き、一縷の望みをかけた作戦も失敗し、独りになってしまったベンが、ミッキーを狂わせた元凶を叩きのめしに行く決意を決めて、エンドロールに入ります。

原題であるバッテリーは、彼らの関係性を示す唯一の単語であり、また、ただそれだけの関係ながらもお互いがこれからも生きていこうと思える、精神的な糧でもある、というのを示唆していて、すごく詩的なタイトルだと思いました。なんでもオブザデッドつければいいと思ってる邦題製作者は見習ってほしい。


観た日:2024/3/31
ハテナ

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