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ショート・タームのFARGOのレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.9
【アメリカの児童保護施設で働くケアマネジャー達と親からの虐待などで心に傷を負った子供達との日常を描いた物語】

再鑑賞を機に、再レビューです😆❗️
私の不動のベストムービーでございます🙌

【明日からの君の方が、僕は、きっと好きです。】

虐待などがテーマでありながらバイオレンス描写は一切無く、鑑賞後温かい気持ちになれる作品🎥

主演は映画『Room』で主演女優賞を取ったブリーラーソン。彼女の素朴で飾らない演技は勿論素晴らしいが、この映画に厚みを持たせているのは何と言っても同じ施設で働く同僚で恋人のメイソン(ジョンギャガラーJr.)と施設に集まる個性豊かな子供達の存在でしょう😊

特に心に傷を抱える子供達の描き方は非常に丁寧で彼らがどの様な虐待を受けたのか詳しく言及される事はなく、劇中《マーカスのラップ》や《ニーナの絵日記》などを通じて間接的に我々に語りかける構図となっています。
またそれぞれの語り方に子供の親への"思い"が端的に表されていると思いました。

例えばマーカスのラップの場合、歌詞から分かる様に完全に両親を罵倒し《自分自身で生きていく事》を歌っています。
彼の心の叫びを聞いたメイソンの困惑した表情と自分の過去をさらけ出したマーカスが見せる安堵の表情と涙が美しい。

それと対照的に描かれているのがニーナの絵日記です。
自分をタコとし親をサメとした彼女自作の絵日記。虐待を繰り返す親こそが一匹オオカミの彼女にとって唯一寄り添える存在であったため、施設に入る事で《親子の関係が途絶えてしまうのではないか…》という切実な思いが描かれていたと感じました。
だからこそ、何度も施設を飛び出し親を求めていたのだと思います。

人間の潜在意識に刷り込まれたトラウマは簡単に払拭できるものではない。
今作トラウマや心傷を覆う負の要素を仮に”幕”とするのならば、開けた土地の様に見えるけれど低い建物に四方を囲まれた閉鎖的な中庭と施設そのもの、風呂場のカーテンなどがその”幕”に相当するのだと感じました。
内へ内へと胸を圧縮させる幕。
ラスト、車のフロントガラスを叩き割るシーンには硬くて頑丈な”幕”を自らの手で破り捨てる事で、彼女自身の傷やトラウマを払拭するメタファーになっているのかなとも思います🙂

この映画を観た人なら、最後のメイソンのたわいもない会話に自然と笑みが溢れ、優しさに溢れた涙が"一粒"流れたのではないでしょうか😊

今作の全てが詰め込まれた《ラストのスローモーションシーン》に涙し、突如暗転する画面と同時に胸の奥に優しさが芽生える感覚を体験する事が出来る。

【人間の素晴らしさが滲み出る傑作】

誰にも言えない傷がある。
決して消えない傷がある。
その”幕”の破り方を誰も教えてくれないから、自分で自分を傷つけてしまう
死にたくなる様な過去があったとしても、その恐怖が完全に消えないとしても
そっと隣で寄り添ってくれる貴方がいるから私は明日からもまた生きていきたい。

私のオールタイムベスト😊
優しさ包まれた宝石の様な作品です
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