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パディントンのNMのレビュー・感想・評価

パディントン(2014年製作の映画)
3.0
パディントンがどういう経緯であの人間のような姿になったのか、というエピソードからスタート。全然知らない人も予備知識なく観始めることができる。
あの帽子は何なのか、どうして森でなくロンドンに住んでいるのか、なぜいつも紳士的な態度なのか、コートはいつ着るのか。

その後、早速の悲劇。結構ショッキング。かわいいだけのストーリーではない。
彼は家族と別れ森を出て、自分の世界を広げる旅に出る。そこで受け容れられるのか……。

見世物になったり、または一目で気に入られたりするのかと思いきや、人間たちの興味は薄い。いじめられることすらない。無関心というのがリアル。
クマどうこうと言うより、若者や地方出身者などはみんなが経験したことのあるようなシチュエーション。よその地から成長のため都会に出て苦労するというのは『魔女の宅急便』に通じるものを感じた。

人間のことやロンドンのことは勉強してきたはずが、いざ着くとシミュレーション通りには振舞えない。「あの国ではよそから来た人に優しいのよ」と聞いてきたのに。今はもう帰れない美しい故郷を時々思い出しては悲しみに浸る。

やっと招かれた家でも、迷惑をかけてばかりでうまくいかない。理想とはかけ離れ、すっかり落ち込んでしまう。善意が喜ばれず、かえってうとまれる悲しさ。悪気はないのに迷惑ばかりかけてしまいお世話になっているのに申し訳ない。

ブラウン夫人以外、良い人がなかなか登場しない。前半ほとんどはけっこう悲しい。中盤でやっと運が向いてくる。しかし今度は別の脅威が。ジェームズ・ボンド並みの体術でパディントンを狙う。

パディントンを怪しんでいた人が、今度は自分がよそ者と呼ばれ足蹴にされる場面も。
誰しもが見た目通りではない。
新しい場所は誰しも不安。クマも人も。

故郷を思って冷たい雨の中ベンチで眠るシーンは思わずぐっと来てしまった。
その分、紆余曲折を経て見つけた居場所は掛け替えのないもの。

子供だましではなく意外と大人でも観られるストーリーだった。クマが主人公というだけで人間に置き換えても成り立つような話。
減点すべき箇所がほぼない。
CGや音楽も美しい。映画館で観ていても後悔はなかったと思う。
疲れている人、イラついている人にお薦め。

吹替版の、悪役・木村佳乃が「くまぁー!!」と呼ぶのが身も蓋もなくて面白い。
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