饂飩粉

クローバーの饂飩粉のレビュー・感想・評価

クローバー(2014年製作の映画)
4.3
 胸キュンが止まらない……。 
 これぞ少女漫画原作映画のあるべき形とでも言わんばかりの胸キュンラブストーリーなのである。

 恋愛音痴のヒロインと、超ドS上司のラブストーリー。
 初めて聞いたときは「うわ、クソだ」と直感したこの組み合わせ。しかし劇中で掘り下げられる二人の過去や、惹かれ合っていく過程と待ち受ける障害、そのどれもがまあ良くできている。
 半ば一方的に始まった付き合いが、徐々に互いを理解していくきっかけを生んでいく展開。作り手がキャラクターをよく理解しているからこそ描ける、胸が詰まるようなすれ違い。そして待ってましたとばかりに訪れる胸キュンシーン……最高だ。最高の少女漫画原作映画だ。
 主役が社会人という設定もあって、「恋か仕事か」という天秤ネタもバッチリ盛り込んである。この辺もベタと言うか独りよがりになりすぎないようになっていて、違和感がない。というか上手い。
 主役二人にとって一番の障害となる会社の取締役兄妹(上地雄輔と夏菜)も非常に良い味を出しているというか、上地雄輔はホント役者としては申し分ないんだよなあ……。

 物語の骨子なんて「最初は相性最悪!?→やっぱり好き!→待ち受ける障害……→そして感動のラストへ!」というラブストーリーの王道もいいところ。だが王道とは普遍的に世に支持されているからこそ王道と呼ばれているのであり、『クローバー』はその王道に沿ったとてつもなく良い映画なのだ。正直先の展開が読めているのに「うわーこの後どうなっちゃうんだ!?」と左胸の辺りがドキドキしっ放し。それほどまでにヒロインとドS上司の前に立ちはだかる恋の障害は大きい。さすが社会人、どっかの高校生たちとはレベルが違う。

 社会人のくせに胸キュンラブストーリーかよ……と思うかもしれないが、そこはキャラクターが見事にカバーしている。
 恋愛音痴――というか有耶無耶で終わってしまった初恋を忘れられないヒロインは、劇中でも「心が中学生で止まっている」と言っている。
 そしてドS上司の方も、ある過去に囚われたまま生きていることが明かされる(ネタバレなので伏せる)。
 映画は、そんな「心を過去に置いてきた」二人が恋愛をきっかけに今を生きようと、変わろうと――四つ葉のクローバーを探そうとするストーリー。
 恋愛の力恐るべし的な話だが、ラブストーリーが「最終的には愛が勝つ」と謳って何が悪いのか。二人の恋愛は二人だけの世界に留まることなく、周囲の人物にも影響を与えている。そうした変化を描いているのもこの映画のいいところだ。

 最後は余談だが、劇中に役者として登場する芸人の使い方も完璧であった。特にフルポン村上。「ここでお前が出てくるのかよ!」と。
 あと今野杏南めっちゃ可愛かったです。僕も彼女に好かれるために性格をドSに変えようと思います。
饂飩粉

饂飩粉