饂飩粉

ファンタスティック・フォーの饂飩粉のレビュー・感想・評価

1.1
 初めに言っておくと、今回の『ファンタスティック・フォー』はヒーローの映画ではない。
 言うなれば、「望まずして超常的な力を得てしまった若者」の映画である。
 そんなこと言うと『スパイダーマン』や『X-MEN』だって、大体勝手にワケ分からない力を手に入れてしまった若者の姿が描かれているわけだが、その二つの映画は後半でしっかりと「ヒーローになる」展開が用意されている。

 しかし、青春こじらせ超能力系POV映画『クロニクル』で一躍有名になったジョシュ・トランクが監督したリブート版『ファンタスティック・フォー』は、その「ヒーローになる」後半の展開が、あまりにもずさんでメチャクチャでテキトーでクソ喰らえなのだ。
 後半は本当にひどい。あまりにも唐突な展開の連続と、リブート前にはあった人命救助描写もゼロ。確かに地球にピンチは訪れるものの、四人のファンタスティックな連中は別にヒーローとしてその危機を救うわけではない。それなのにラストシーンでさも「俺達スーパーヒーローチーム!」みたいなノリで勝手に盛り上がるのだから、観ているこちらとしては登場人物は脳味噌までファンタスティックになってしまったのではないかと疑うレベル。

 前半は、前半は良かったのだ。
 四人が抱えるそれぞれのコンプレックスの微妙な差異、若者だからこそのちょっとした過ちが引き起こす大事故――そしてSFホラーを思わせる演出で描写される四人の”力”…………。
 パンフレットを読む限りでは、監督のジョシュ・トランクは「事故→ホラーチックな能力描写」が一番やりたかったことなのだという。
 そして同時に「僕が構想の段階から考えていたシーンが100%再現されている」とも言っている。

 つまり、他のシーン(要は悲惨な出来の後半)は監督の意図からは大きく外れているのだということだ。
 この辺りはパンフレットに載っているジョシュ・トランクのインタビューを読むと、彼が言葉を慎重に選びながら「全然思い通りの映画作れなかったわクソが」と言っているのがわかる。
 事実、『ファンタスティック・フォー』は撮影現場でのトラブルがとんでもなかったと聞いている。
 監督とMr.ファンタスティック役の俳優マイルズ・テラーが殴り合いの喧嘩をしただとか、撮影終盤には監督の控室がなくなっていただとか、もうどこまでが本当なのかわからないが、少なくとも監督本人が「劇場公開版とは違うバージョンは本当にいい出来だ。でも公開できない」と言ったので、現場でトラブルがあったのは間違いない。

 そんな環境で作られたことを踏まえれば、後半急に王道ヒーロー路線に舵を切ったのも、もしかするとプロデューサーや制作会社サイドからのテコ入れだったのかもしれない。
 平成ライダーで例えると、仮面ライダー響鬼の29話までのストーリーと30話以降のストーリーが一本の映画の中で強引に繋がっている感じだ。

 今後ジョシュ・トランクのキャリアがどうなるのか、続編を企画しているらしい20世紀FOXはどういう算段があるのか、全ては未だに謎に包まれている。
 とりあえず、一本の映画として評価を下すと、大体これくらいのスコアだろう。やはり支離滅裂な映画はつまらん。
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