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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のmomokaのレビュー・感想・評価

4.6
海底で眠っていた、暗号機「エニグマ」が発見されたとニュースで知ったので、これは観るしかないと思い本作を鑑賞。

戦争を題材にした作品というだけでも、涙腺が緩むのに、ひとりの男性の数奇な人生に寄り添うように丁寧に描かれていたストーリーには号泣してしまった。作品を観終わってもしばらく涙が止まらず…。

本作は、第二次世界大戦下において、ナチス・ドイツの難解な暗号機「エニグマ」を解読することに人生をかけた、天才数学者アラン・チューリングの物語。何十年も英国政府から隠されてきた事実を基に制作されたというから驚きだ。

暗号を解読できても、それをナチス側に悟られてはいけない。そのため、解読できたナチス側の詳細な軍事作戦の内容は、海軍指揮下のチューリング率いる、暗号解読チーム内だけの極秘にして、うまい具合に軍部には兵士たちに伝える情報を選別していたのだった。
戦時中に、こうした頭脳派チームが存在していたことは初めて知る事実であった。戦地に行かずとも、彼らも兵士たちや、一般人と同じように苦しみ、日々暗号の世界で戦っていたのかと思うと、戦争は誰もを地獄へと追いやる負の争いでしかないと改めて考えさせられた。

「なぜ、人は暴力をふるうのか」
チューリングはいつもそのことについて考えていた。同性愛が罪とされていた時代に、自身が同性愛者であることを隠しながら、暗号解読装置を通して、戦争とも向き合い続ける日々。彼の生身の感情は決して分からないが、慮るだけでも心が壊れそうになる。暗号解読によって、助かった人もいれば、助からなかった人もいる。果たして、自分が行ったことは正義であったのだろうか。

さまざまなことにもがき苦しみながら孤独に生きたチューリングの想いは、ベネディクト・カンバーバッチの表情から手に取るように伝わり、演技力が光っていた。そして、チューリングを見守り続けた、キーラ・ナイトレイ演じるジョーンもとても素敵な女性で、彼女の優しい言葉が心に染みた。

それにしても、チューリングの最期が苦しくて、2013年にエリザベス女王から”死後恩赦”が与えられたそうだが、報われない気持ちになった。

チューリングに、あなたが成し遂げた「エニグマ」の解読は、国家に隠されるべき行為ではなく、称えられるものであり、現代のコンピュータの発明にも繋がったんだよと、そして、自身のセクシュアリティを恥じることはないんだよって声を掛けてあげたい。

戦争をテーマにした作品というと、悲惨な戦地を描いたものが多いが、本作は別の視点から戦争を捉えており、学ぶべき点も多く、本当に鑑賞して良かった。オススメです。
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