ぎー

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のぎーのレビュー・感想・評価

4.0
「時に、誰も思いもしなかった人物が、誰も思いもしなかったことを成し遂げるんだ」

モルデン・ティルドゥム特集1作品目。
第二次世界大戦中にエニグマ暗号の解読に取り組み、同性愛行為で捕まったイギリスの暗号解読者アラン・チューリングを描いた映画。
この映画を見なければ知ることがなかったアランという天才の伝記映画であると共に、彼の境遇を通して性嗜好マイノリティの現実を描いた社会的な映画でもあり、第二次世界大戦下での情報戦の裏側を描いたある意味戦争映画でもあり、そして何よりアランと彼のチームやパートナーのクラークとの関係性を通して人と人との関係性が生み出す底力を描いたヒューマンドラマ!
良い映画は色々な要素が素晴らしいけど、この映画はまさにそう。
いろんな観点から見て本当に良く出来た映画だった!
戦時下とは言え美しいイギリスの風景や、ドラマチックな音楽も印象的だった。

この映画の中では何度か冒頭のセリフが出てくる。
一見コミュニケーション能力が欠如していて、人とは違うアランの事を指しているのかと思う。
全然違った。
この台詞は全ての人に向けられた台詞だったと思う!
多分アランのチームの誰が欠けていてもエニグマの解読は出来なかったかもしれない。
1番印象に残っているシーンは、指揮官デニストン中佐がアランを解雇しようとした時、チーム員全員が辞職をチラつかせて阻止した場面。
結局どんなに天才でも人は1人では生きていけないし、何も成し遂げることはできない。
そんな当たり前の事を感動的でドラマチックなストーリーで教えてくれる、素晴らしい映画だった。

ドラマチックな物語とは言え、題材は数学者が暗号解読に取り組む物語。
間違えれば退屈になりかねない。
第二次世界大戦下の暗号解読の筋書きに、現代で空き巣に入られたアランをノック刑事達が取り調べてアランの秘密を明かしていく筋書きと、寄宿学校で孤独だったアランが唯一の友人クリストファーとの交流を通して、暗号や同性愛に目覚めていく過去の筋書きがうまく入り混じっていて、テンポ良く、良い感じにミステリアスにストーリーが進むので、ドンドンのめり込んでいった。

もちろん突っ込みどころが無いわけではない。
面白くするために色々と映画らし過ぎる場面はあった。
冒頭のデニストン中佐とアランの面接はあまりにも芝居がかっている。
クロスワードパズルを解いてチーム員になったクラークはキーラ・ナイトレイが演じていて、本人を知らないのに言うのもなんだけど、多分美人すぎる。
独身でクラークが働く事に両親が難色を示しているのを知り、婚約したのは実話なのかな?
居酒屋でクラークの友人がドイツ軍のラブレターの暗号を読んでいることを知って、すぐにエニグマを解読しちゃう展開も出来過ぎだと思った。
それでも、エニグマを解読した場面には心が震えたし、その後の、解読した暗号をどう戦争に活用するかチーム員が議論するところには考えさせられた。
チーム員の1人ケアンクロスがソ連のスパイだと知っていて、情報を流させている下りは、戦争って難しいなと思った。
MI6長官のミンギスは滅茶苦茶格好良いけど、恐ろしい人だった。
この作戦自体が最高機密なので、これだけの功績があるのに終戦と共に全てを燃やしているシーンには寂しい気持ちになったけど、こうやって素晴らしい映画になって多くの人に事実を知ってもらえて、良かったね。

◆備忘ストーリー
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密
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