レンタルにて。大東亜戦争下、コンピュータの発明によって、独の暗号「エニグマ」の解読に成功し、連戦連負の英を最終的に勝利に導いた天才数学者アラン・チューリングの伝記物語。監督はモルテン・ティルドゥム、チューリング役にベネディクト・カンバーバッチ、その妻・よき理解者にキーラ・ナイトレイ。脚本、キャスト、演技、音楽、そのどれもがこれ以上望むべくもないクオリティ。天才ゆえに、周囲の無理解や差別に苛まれ、死してなお、2013年の恩赦まで、性犯罪者・変人として不当な評価を受け続けたアラン。この映画を世に出したことによって、彼が単にコンピュータの生みの親であっただけでなく、大戦の流れを変えた戦略家であったことも窺い知ることができる。またこの天才を、よくある超人としてではなく、時代に翻弄され、苦悩する一人の人間として、より現実味のある人間像として描くことに成功している。この作品は、分かりやすく丁寧な作り、誇張に走らない上質な人物描写、手抜きのない時代考証、何れを取っても『海の上のピアニスト』を彷彿とさせる名作だと思う。
