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マルケータ・ラザロヴァーのkyokoのレビュー・感想・評価

マルケータ・ラザロヴァー(1967年製作の映画)
4.5
548日間、実際に極寒の山奥で生活しながら撮影したというから、もうその時点で常軌を逸しているのだけど、その狂気はチェコ映画史上最高傑作という名声にふさわしい美しいショットに見事結実していた。

露わになった胸元から鳩を出すという、ピュアとエロスがないまぜになったマルケータの登場シーンが秀逸。そして娘を修道女にさせたい父親の、娘の処女性へのこだわりに隠れたエゴ、厳かな雰囲気の修道女がチラ見せる欲深さ、凌辱、窃盗や殺人、近親相姦といった、禁忌のオンパレードで描く物語に、それでも神の存在を感じずにはいられないのが不思議。
子羊ちゃんの行く末に「あああ」と思いながらちょっと笑ってしまった不謹慎な私を神様許して。
キリスト教的邪悪な存在でありながら、この作品のミューズであり続けたマルケータが美しいのはもちろんなのだけど、個人的にはアレクサンドラの野性味溢れる美しさにも惹かれる(彼女の最後の行動にはびっくりしたけど、これも真の愛ゆえか)。

修道女の祈りが呪詛にすり替わり、神に背を向けたマルケータに夫婦の誓いをさせたのはあの人。意外というか皮肉というか。

冒頭は「誰が誰やねん」でかなり焦ったものの、人間関係の整理がつきだすと、割とすんなり観ることができた。たまに「これ回想シーンだったのか!」とあとから気づいたりしたけど。あと、チャプターごとにつけられるあらすじは個人的にはあんまり役に立たなかったな。
とにかくこの映像美を余すことなく観るためには、ストーリーを追うことに気を取られないよう、観る前にキッチリ筋を入れておくことをお勧めします。
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