まっつん

マップ・トゥ・ザ・スターズのまっつんのレビュー・感想・評価

4.2
これがクローネンバーグ流「地獄のハリウッドだ!!!!」意外なことにクローネンバーグにとっては初めてハリウッドで撮った映画だそうです。

ハリウッドの裏側を描いた作品というのはもう数え切れない程ありまして、「マルホランドドライブ」やら「サンセット大通り」やら「ザ プレイヤー」やらと幾らでも出てくるわけです。今作はそんな擦り倒されたテーマでありながらやはりクローネンバーグ映画としか言えない出来になっています。

やはり観ていて「クローネンバーグの映画だなぁ」と思う点としてはやや突き放した感じの冷たい視点ですよね。この視点がハリウッドセレブ達の軽薄で滑稽な姿をより強調しているように感じます。どいつもこいつも虚栄心剥き出しの怪物と化すハリウッド特有な「磁場」みたいなものがクローネンバーグ特有の冷たく突き放したタッチで抉り出されていきます。強力な引力を持ったハリウッドから登場人物はどうしたって逃れられない。てか逃れようとも思わせない程の磁場の強力さなんですよね。だからと言ってクローネンバーグも「ハリウッドには別に何とも思ってないよ」という好きでも嫌いでもないスタンスですし、これがハリウッドの実態にそのまま当てはまるとも思えません。あくまで舞台立ての一種だと思いますね。(しかし、脚本のブルースワグナーは実際ハリウッドで運転手をしていたらしく、そこでの実体験を反映したらしいです。どこの部分なんだろうか?!)

それでいてあまりに悪趣味かつ露悪的な世界観。つまりは最高ってことなんですけど笑。その露悪さを一人でグイグイ引っ張るのが名女優ジュリアンムーア。年の割にはチャイルディッシュな振る舞いの痛々しさは序の口、例のごとく豪快な脱ぎっぷり、豪快なハメっぷり、挙げ句の果てには「便秘になった」とか言って屁をひねり出すという笑。相変わらず身体張ってんなぁ〜って感じでジュリアンムーアという人は本当に偉いなぁと感服いたしました。

そして真に心を震わすのがラスト。人によってはなぜこのような意思決定を?と思わせる結末。しかし、やっぱり彼らはハリウッドという磁力に引き込まれ、搾り取られた人間であり、もう「その外」では生きていけないんです。しかし、その決断はハリウッドから逃げ出す唯一の道であり、悲劇的でありながら、どこか開放感すら感じさせるラストになっていたと思います。