雪崩のシーンは本物みたいに見えるし、ワンカットで夫婦の信頼に決定的な亀裂が入ってしまう大事な場面なので非常に良かった。
雄大な雪山のスキー場という舞台も、人間の存在のちっぽけさやよるべなさ、それをコントロールできると思っている尊大さ、その実自力ではほとんど動いていない（リフトとスキー）滑稽さなど、幾重にもメタファーが読み解けて上手い。
エバが核心に迫ろうとすると、他の客が誕生祝い始めたり、ドローンが割り込んできたりと、絶妙に観客を撹乱させる仕掛けも考え抜かれている。
映画史上で連綿と続いている意地悪ホームドラマの系譜なのだが、そこに男らしさ、父権主義に依存し、一度そこから外れた時に機能不全に陥ってしまう共同体の危うさが特にクローズアップされている。
終盤にエバをトマスが助さ助ける場面。「救出劇」を演じ直すことで、ようやく元の役割に戻るというオチは『ビフォア・ミッドナイト』あたりを思い出す。
夫婦の気まずいギスギスが、友人カップルに伝染するところ、これは意外とある。
「あなたが一番ハンサムって言ってたよ」「ごめん、人違いだった」の場面には爆笑。
