ハター

フレンチアルプスで起きたことのハターのレビュー・感想・評価

4.5
匠発見伝!
(おもしろい映画を作る人を見つけたので伝えたい!の意)

人間って、自分がかわいいですよね。私自身もやっぱり自分はかわいいです。この物語の主役である彼は我が身のかわいさ余り、咄嗟に取った行動が一家の主としての立場を自ら追いやる結果となってしまう。そのトラブルの後、妻と子供達は亀裂が入った家族間の関係を緻密に描く。シンプルなストーリーが根を張る中で、デリケートな人間部分の描写に焦点を当てて展開していきますが、そこでリューベン・オストルンド監督の手腕が冴える。ほんとこの人巧い。

一家四人、休暇で訪れたリゾートスキー場。何の変哲もない姿ではありますが、構図の美しさに目は釘付け。絶妙なタイミングで流れだす音楽、無駄打ちしないSE、数多の演出を効果的に用いて作られる緊張感。軽く尻が浮く程度の演出が良い。また、第三者視点を意識した遠目からのカメラアングルはリアルの傍観者になった気分にさせてくれる。

とにかく声をあげたいのは、人間心理の描き方。主役から脇役までキャストの選定にも抜かりない。特に子役2人のハマり方は演技とは思えぬほど!「...パパ!...パパ!!パパ!!!」この叫び、とても良い具合にクレッシェンドをキメてきます。キーポイントである雪崩のシーンは、映画史上最高の雪崩シーンにしたかったという監督。いや、こんな画は見たことなかったな。斬新新鮮斬新鮮。

...ところで、毎年東京では冬になるとスキーやスノボを担いだアクティブ人と引っ切り無しにすれ違いますが、これからは心の中で「楽しく滑ってらっしゃいどうかご無事で」と声をかけてあげる事にします。私の今冬は、例年通りこたつで丸くなるくらいの事でしょう。スキーのスの字くらいしか知らない私に、アクティブのアの字を分けて欲しい。(意味不明)

凝りに凝った演出はテンションが落ちる事なく、終始絶妙なタッチで描かれていました。シリアスながらもキレの良いコメディ感で中和。ドキドキしながらちょっと笑える良い映画。うん、カンヌ映画祭ある視点部門審査員賞万歳。
今回、東京国際映画祭2014のワールドフォーカス部門にて鑑賞。日本劇場公開は今のところ未定のようですが、もしチャンスがあれば是非足を運んでほしいそんな一作。
ハター

ハター